「ビジネスケアラー」が増加中! 介護離職を防止せよ
目次
「介護」は、突然にやってきます。企業が常日頃から、公的制度を活用した「介護離職を防止するための取り組み」などを策定することで「介護離職」を防止することができます。
ビジネスケアラーが増加中 対岸の岸では済まされません
2024.3.26.の日経新聞によると、
働きながら両親らの介護にあたるビジネスケアラーが増えているそうです。
企業に勤める人のうち、介護をしている人は2022年に321万人と10年で3割ほど増加したとのこと。
実際、全国の要介護者(要支援者)は、令和4年度691万人となり、
介護は実際に誰にでも、起こりうることとなっています。
また、介護は介護が始まると要介護者が死に至るまで長期に続く事になりますので、会社も仕事と介護の両立について本気で取り組んでおく必要があります。
実際、私自身も先日、親が倒れて、介護が突然、降ってきました。
それまで、「元気に病院通い」している親だったんですが、
自宅で転んでしまい、腰を圧迫骨折。
現在、通所サービスを利用して、自宅療養しています。
育児と違って介護は、準備ができないこと、
終わりが見えないところが、大変です。
従業員の不測の事態に備えて、企業も準備をしておきましょう
そのような従業員の不足の事態に備えて、
企業でも色々と準備をしておくことをお勧めします。
介護短時間勤務・介護休業・介護離職等に備えて、
従業員の仕事内容をマルチ化して、直ぐに引き継ぎできる体制にしておきます。
両立支援推進員を選任し、周知しましょう
従業員の家族が要介護となった場合に相談できる、職業家庭両立推進者(育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律第29条、同施行規則第34条の2)を任命し、従業員に周知しておきます。
職業家庭両立推進者は、
先ずは、各市町村等が運営する地域包括支援センターのケアマネージャー(介護支援専門員)に何でも相談する事を勧めます。ケアマネージャーが、御社の従業員の両親にあったケアプランを策定してくれます。
介護休業の制度とは
これらの制度をベースにして、自社の介護休業の取り組みを決めていきます。 まずは、制度の確認を行いましょう。
制度 | 概要 |
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介護休業 | 要介護状態にある対象家族1人につき通算93日まで、3回を上限として分割して休業を取得することができます。 有期契約労働者も要件を満たせば取得できます。 |
介護休暇 | 通院の付き添い、介護サービスに必要な手続きなどを行うために、年5日(対象家族が2人以上の場合は年10日)まで1日又は時間単位で介護休暇を取得することができます。 |
所定外労働の制限 (残業免除) |
介護が終了するまで、残業を免除することができます。 |
時間外労働の制限 | 介護が終了するまで、1か月24時間、1年150時間を超える時間外労働を制限することができます。 |
深夜業の制限 | 介護が終了するまで、午後10時から午前5時までの労働を制限することができます。 |
所定労働時間短縮等の措置 | 事業主は、利用開始の日から3年以上の期間で、2回以上利用可能な次のいずれかの措置を講じなければなりません。 ・短時間勤務制度 ・フレックスタイム制度・時差出勤の制度 ・介護費用の助成措置 ※労働者は、措置された制度を利用することができます |
不利益取扱いの禁止 | 介護休業などの制度の申出や取得を理由とした解雇など不利益な取扱いを禁止しています |
ハラスメント防止措置 | 上司・同僚からの介護休業等を理由とする嫌がらせ等を防止する措置を講じることを事業主に義務付けています |
介護休業給付金とは
下記のような要件に合いますと、雇用保険から介護に取り組む従業員に対して、介護休業給付が支給されます。
介護休業給付金の支給要件、支給額等
支給要件 | ・対象となる2週間以上にわたり常時介護(歩行、排泄、食事等の日常生活に必要な便宜を供与すること)を必要とする状態にある家族(配偶者(事実婚を含む)、父母(養父母を含む)、子(養子を含む)、配偶者の父母(養父母を含む))を介護するために介護休業を取得したこと(男女不問) ・原則として、休業開始前2年間に、賃金支払基礎日数が11日以上ある月が通算して12か月以上あること |
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支給額 | 休業開始時賃金日額×67% 賃金日額:介護休業開始前6か月間の賃金総額÷180 賃金日額の下限2,500円・上限16,670円(2019年8月1日現在) ※会社から賃金が支払われる場合は、賃金が休業開始時賃金日額の13%を超えると支給額が減額され始め、賃金が80%以上の時には給付金は支給されない |
支給期間 | 支給対象となる家族の同一要介護につき1回の介護休業開始日から最長3か月間内に通算して93日まで |
留意点 | ①介護休業を開始する時点で、介護休業終了後に離職することが予定されている場合は、支給の対象とはならない。 ②一般被保険者が65歳に達すると高年齢継続被保険者となるので、この日以後に介護休業を開始した場合は、支給対象者とならない。 ③高年齢雇用継続給付を受けている場合、高年齢雇用継続給付の支給対象月の初日から月末までの間、引き続いて介護休業給付を受けることができるときは、その月の高年齢雇用継続給付を受ける事はできない。 ④介護休業開始から起算した1か月ごとの期間中に、就業していると認められる日(全日休業している日(日曜日や祝日など、会社の休日となっているも含む)以外の日)が10日以下でなければ、その支給単位期間については支給対象とならない。 ⑤なお、介護休業は、産前・産後休業中に開始することはできず、介護休業の期間中に他の家族に対する介護休業、産前・産後休業、育児休業が開始された場合、それらの新たな休業の開始日の前日をもって当初の介護休業は終了し、その日以降の分は介護休業給付金の支給対象とならず、重複受給はできない。 |
対象家族の範囲
企業は、「仕事と介護の両立支援プラン」を策定しておきましょう
企業は、「仕事と介護の両立支援プラン」を策定しておくと、介護離職の防止に役立ちます。
仕事と介護の両立支援対応モデル
厚生労働省 「企業における仕事と介護の両立支援実践マニュアル」より
1.従業員の仕事と介護の両立に関する実態把握します
従業員が抱えている介護の有無、仕事と介護の両立に必要な自社の介護休業などの制度や公的な介護保険制度などの理解度に関する現状を、主に従業員に対するアンケート調査を実施することなどにより把握します。
2.制度設計・見直し
上記1のアンケート調査などによる実態把握をふまえて、介護休業など自社の両立支援制度を「従業員に周知されているか」「利用要件がわかりやすいか」「従業員のニーズに対応しているか」などの観点から点検し、課題があれば見直します。
3.介護に直面する前の従業員に対して、仕事と介護の両立に関する心構えや基本的な情報を、社内研修の実施やリーフレットの配付などにより提供します。
介護は、子育ての場合と異なり、時期を予測することは難しいです。従業員が介護に直面してからでは遅いことがあります。 常日頃から、従業員が介護に直面する前に、介護離職しなくて済むような、情報提供などの支援を行うことがきわめて重要です。
4.介護に直面した従業員への支援
介護に直面している従業員に対して、自社の両立支援制度の利用支援、相談しやすい体制の整備、地域の介護サービスの利用支援などの情報提供を行います。
5.働き方改革
介護のために時間制約のある従業員であっても、離職せずに就業継続できることに加えて、仕事に意欲的に取り組めるような職場環境や働き方をめざします。 残業時間の削減や年次有給休暇の取得促進、仕事上の情報共有、従業員同士が支援し合える職場風土づくりが大切です。
これらを継続実施し、公的制度をベースにしつつ、御社と御社の従業員にあった 「仕事と介護の両立支援策」を策定して下さい。
厚生労働省のトモニンマークを取得して、職場意識の浸透をはかり、外部にもアピール
厚生労働省では、「仕事と介護を両立できる職場環境」の整備促進のためのシンボルマーク(愛称:トモニン)を認証しています。
企業が介護離職を未然に防止するため、仕事と介護を両立できる職場環境を整備促進する次世代法に基づく一般行動計画を策定し、「両立支援のひろばなど」に公開することで、シンボルマークを取得することが可能です。