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2024年10月2日

育児・介護休業法等の改正について

育児・介護休業法等の改正

育児・介護休業法等の改正法とは?

今回改正された法律について、冒頭では「育児・介護休業法等の改正法」と省略していますが、正確には「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律及び次世代育成支援対策推進法の一部を改正する法律」という長い名称の法律であり、育児・介護休業法や次世代育成支援対策推進法などの法律をまとめて改正する法律になります。

この法律は、今年、2024年(令和6年)の5月24日に成立し、5月31日に公布されていますが、この改正目的を簡単にまとめると、男女ともに仕事と育児・介護を両立できるようにするため、労働者を支援する措置を講じることにあります。

改正法の概要

今回の育児・介護休業法等の改正法は、次の3つが柱として挙げられており、この3つの柱ごとにそれぞれの改正事項がぶら下がっているという整理になっています。

①子の年齢に応じた柔軟な働き方を実現するための措置の拡充
②育児休業の取得状況の公表義務の拡大や次世代育成支援対策の推進・強化
③介護離職防止のための仕事と介護の両立支援制度の強化等

改正法の施行時期

今回の育児・介護休業法等の改正法の施行時期は、多くの改正事項が2025年(令和7年)4月1日とされていますが、この法律の公布日である2024年(令和6年)5月31日から既に施行されているものや2025年(令和7年)10日1日から施行予定とされるものもあります。

以下では、施行時期が早いものから順番に改正内容を解説していきたいと思います。

2024年5月31日から施行されている改正事項

2024年(令和6年)5月31日は、育児・介護休業法等の改正法の公布日であり、この日から既に施行されているものがあります。それは、次世代育成支援対策推進法の有効期限の延長です。

次世代育成支援対策推進法は、2003年(平成15年)7月に10年間の時限立法(有効期限のある法律という意味)として制定され、その後、2025年(令和7年)3月31日まで延長されていましたが、今回の改正でさらに2035年(令和17年)3月31日まで延長されました。

ちなみに、この次世代育成支援対策推進法がどのような法律であるのか、あまりピンとこない方もいらっしゃると思いますので、この法律について簡単に触れておきますが、この法律は、我が国における少子化対策の強化の一環として、次代を担うこどもが健やかに生まれ、育成される環境を社会全体で整備するために制定された法律になります。例えば、常時雇用する労働者が101人以上の企業は、労働者の仕事と子育てに関する「一般事業主行動計画」というものを策定して、都道府県労働局に届け出ることが義務になっていますが、このルールはこの法律に規定されています。

2025年4月1日から施行される改正事項

2025年(令和7年)4月1日から施行される改正事項は次のとおりです。

①所定外労働の制限(残業免除)の対象拡大

一定の年齢に達するまでの子を養育する労働者は、原則として事業主に請求することによって所定労働時間を超える労働(残業)が免除されることになっていますが、この「一定の年齢に達するまでの子」の定義が次のように見直されています。

改正前 改正後
3歳に満たない子を養育する労働者は、請求すれば所定外労働の制限(残業免除)を受けることが可能 小学校就学前の子を養育する労働者は、請求すれば所定外労働の制限(残業免除)を受けることが可能

②子の看護等休暇の対象拡大

看護休暇とは、病気になったり、けがをした子の世話などを行うための休暇のことを指し、1年度当たり5日(対象となる子が2人以上の場合は10日)を限度に取得が認められていますが、この看護休暇については次のように見直されています。

改正前 改正後
名称 子の看護休暇 子の看護休暇
対象となる子の範囲 小学校就学の始期に達するまで 小学校3年生の修了まで
取得事由 ・病気やけが
・予防接種/健康診断
左記の取得事由に以下が追加
・感染症に伴う学級閉鎖等
・入園(入学)式、卒業式
労使協定の締結により除外できる労働者 (1)引き続き雇用された期間が6か月未満の者
(2)週の所定労働日数が2日以下の者
左記の(1)を撤廃し、(2)のみとする。

③育児のためのテレワークの導入が努力義務化

3歳に満たない子を養育する労働者がテレワークを選択できるように措置を講ずることが事業主の努力義務とされます。

ただし、このテレワークの措置を講じることについてはあくまで努力義務であるため、この措置を講じなくても罰則等の適用はありません。

④育児休業取得状況の公表義務が300人超の企業に拡大

この公表義務があるのは、現在の整理では従業員数が1,000人超の企業になりますが、今後は、従業員数300人超の企業に育児休業等の取得の状況を公表することが義務付けられます。

⑤育児休業取得等に関する状況把握・数値目標設定の義務化

従業員数100人超の企業は、「一般事業主行動計画」策定時に次のことが義務付けられます。(従業員数100人以下の企業は努力義務となります。)

・計画策定時の育児休業取得状況(※1)や労働時間の状況(※2)把握等
(PDCAサイクルの実施)
・育児休業取得状況(※1)や労働時間の状況(※2)に関する数値目標の設定

※1 男性の育児休業等取得率となる予定です。
※2 フルタイム労働者1人当たりの各月ごとの時間外労働及び休日労働の合計時間数等
となる予定です。

⑥介護離職防止のための個別周知・意向確認等の義務化

介護離職を防止するため、企業には下記の措置を講じることが義務化あるいは努力義務となります。

・介護に直面した旨の申し出をした労働者に対する個別の周知・意向確認の措置(面談・書
面交付等による)
・介護に直面する前の早い段階(40歳等)での両立支援制度等に関する情報提供
・仕事と介護の両立支援制度を利用しやすい雇用環境の整備(研修、相談窓口設置等のいず
れかを選択して措置)
・要介護状態の対象家族を介護する労働者がテレワークを選択できるようする(努力義務)
・介護休暇について、引き続き雇用された期間が6か月未満の労働者を労使協定に基づき除
外する仕組みを廃止

2025年10月1日から施行される改正事項

2025年(令和7年)10月1日から施行される改正事項は次のとおりです。

①柔軟な働き方を実現するための措置等の義務化

事業主には、3歳以上、小学校就学前の子を養育する労働者に関して、職場のニーズを把握したうえで柔軟な働き方を実現するための措置を講じ、労働者が選択して利用できるようにすることが義務付けられます。

この柔軟な働き方を実現するための措置としては、以下のうち事業主が2つ以上を選択して措置を講ずることが求められています。

・始業時刻等の変更
・テレワーク等(10日/月)
・保育施設の設置運営等
・新たな休暇の付与(10日/年)
・短時間勤務制度

②仕事と育児の両立に関する個別の意向聴取・配慮の義務化

妊娠・出産の申し出時や、子が3歳になる前に、労働者の仕事と育児の両立に関する個別の意向聴取・配慮が事業主に義務付けられます。

なお、意向聴取の方法は、面談や書面の交付等となる予定です。また、具体的な配慮の例としては、自社の状況に応じて、勤務時間帯・勤務地にかかる配置、業務量の調整、両立支援制度の利用期間等の見直し、労働条件の見直し等が指針で示される予定です。
さらに、配慮に当たって、望ましい対応としては、子に障害がある場合等で希望するときは、短時間勤務制度や子の看護等休暇等の利用可能期間を延長すること、また、ひとり親家庭の場合で希望するときは、子の看護等休暇等の付与日数に配慮することなどが指針で示される予定です。

まとめ

今回の育児・介護休業法等の改正では、事業主に多くの事項に対応することが求められています。事業主および労務管理担当者はこの改正内容を正しく理解し、自社における制度や社内規程などを見直すことが求められますし、従業員への周知や育児や介護を行う労働者に対して適切に配慮できるように、社内研修などを通じて啓発を行うことも重要になるでしょう。

この改正内容を踏まえて、様々な措置や取り組みを通じて、仕事と育児・介護の両立を促し、いっそう働きやすい環境を整えるようにしてください。

 

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最終更新日:2024年10月7日

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