年末年始に従業員が帰省し家族と接触した場合の労務管理Q&A①
Q. 年末年始に一部の従業員が東京や大阪などの新型コロナウイルスの感染拡大地域から帰省した家族を迎え入れていたことがわかったが、その従業員に対して自宅待機を命じることはできるか?
A. 会社は、全従業員の健康や安全を確保する義務があるため、発熱や咳などの症状が続くなど新型コロナウイルスの感染が疑われる従業員に対しては、業務命令として自宅待機を命じることができます。
結論から言えば、上記のケースにおいても、会社都合ではあるものの、あらかじめ従業員に丁寧に説明し、休業補償も前提としているのであれば、自宅待機を命じることはできます。
しかしながら、その従業員に何の症状もみられないにもかかわらず、感染拡大地域から帰省した家族と接触したことだけをもって自宅待機を命じることは、従業員にとって不合理、かつ、納得感に欠けるものであると言えます。その判断や労務管理には注意が必要です。
従業員は私生活でも感染を拡大させないように注意すべきですが、そもそも会社として従業員が家族と接触することを禁止することはできませんし、自宅待機とする期間中に平均賃金の60%以上の休業手当を支払ったとしても、従業員にとっては、問題なく業務に従事できるにもかかわらず100%の賃金を受け取れないのであれば、不利益にしかなりません。
※このケースでは、民法第536条の危険負担(契約上の考え方)の問題として、賃金の全額を支払わなければならない可能性が高いと言えます。
一般的に、従業員が感染していない場合で業務命令として自宅待機を命じるのは、従業員に発熱や咳などの症状がみられる場合(その従業員が自主的に休まない場合)や従業員が保健所から濃厚接触者と判断された場合です。
会社としては、少しでも感染が拡大するリスクを減らしたい気持ちがあるにしても、自宅待機を命じる場合には、その従業員の個別の状況を判断した上で行うようにしてください。