就業規則の基礎知識

2020年7月29日

起業される方、あるいは、従業員の人数が多くなってきた会社の経営者に求められる手続きの1つが、会社のルールブックとも言える就業規則の作成です。

この記事では、就業規則とはそもそもどのようなものなのか、また、作成にあたって知っておくべき事項など、就業規則の基礎知識について解説しています。

Contents

就業規則ってなに?

就業規則とは、労働基準法第89条において、パートやアルバイトを含めて常時10人以上の労働者を使用する事業場(事業所)に作成が義務付けられているもので、従業員が会社で働くにあたっての服務規律や労働時間、賃金などの労働条件などを定めるものです。
まずは、就業規則に記載しなければならない事項や作成単位、届出・周知義務について説明します。

記載しなければならない事項

就業規則には、必ず記載しなければならない事項と、定めがある場合(例えば、退職金など)に記載しなければならない事項があります。(労働基準法第89条)

必ず記載しなければならない事項(絶対的必要記載事項)

  1. 始業及び終業の時刻、休憩時間、休日、休暇並びに交替制の場合には就業時転換に関する事項
  2. 賃金の決定、計算及び支払の方法、賃金の締切り及び支払の時期並びに昇給に関する事項
  3. 退職に関する事項(解雇の事由を含む。)

定めがある場合に記載しなければならない事項(相対的必要記載事項)

  1. 退職手当に関する事項
  2. 臨時の賃金(賞与)、最低賃金額に関する事項
  3. 食費、作業用品などの負担に関する事項
  4. 安全衛生に関する事項
  5. 職業訓練に関する事項
  6. 災害補償、業務外の傷病扶助に関する事項
  7. 表彰、制裁に関する事項
  8. その他全労働者に適用される事項

作成単位

就業規則は、会社ごとではなく、いわゆる事業場(支店や営業所、工場など)ごとに作成することが求められています。

届出・周知義務

就業規則を作成・変更したときは、労働者の過半数で組織する労働組合、労働組合がない場合は、労働者の過半数を代表する者からの意見書を添付して、管轄の労働基準監督署に届け出なければなりません。(労働基準法第89条、第90条第1項・第2項)
また、作成・変更した就業規則は従業員に周知しなければなりません。(労働基準法第106条)
※就業規則の周知方法は最後に詳しく説明しています。

就業規則の役割とは?

就業規則は10人以上の従業員がいる事業場に作成が義務付けられているものですが、企業として事業を継続、発展させていくことを考えれば、法律上の義務にかかわらず必要になってきます。
就業規則の企業における役割は、大まかに言えば次の3つが挙げられます。

社内の秩序維持

服務規律を設けることにより、社内の秩序を維持することができます。

労務管理の効率化

労働時間や休憩時間、休日を定め、また、時間外・休日・深夜労働を命じることがあることなどを明記することで、労務管理の効率化を図ることができます。

労働条件の明確化

従業員の賃金体系その他の労働条件を明確にすることで、従業員も安心、納得して働くことができるようになります

就業規則がなければできないこと

就業規則は、従業員が10人未満の事業場については作成する義務はありません。
ただし、就業規則がなければ、次のようなことは行えない、あるいは、行うことが難しくなります。

時間外・休日・深夜労働(残業)

1日の労働時間は、原則として休憩時間を除き8時間を超えることはできません。(労働基準法第32条第2項)
この8時間を超える労働を可能にするためには、36協定(時間外労働・休日労働に関する協定届)を労使で締結し、労働基準監督署に届け出ることが必要になりますが、実はそれだけで従業員に残業を命じることができるようになるわけではありません。
残業を命じるためには、そもそも就業規則に業務上の必要があるときは残業を命じることができる旨の定めがなければなりません。

懲戒処分

懲戒処分を行うためには、その種類(けん責や減給、出勤停止、懲戒解雇など)を明確にし、どのような行為が懲戒に該当するのかなどを就業規則に定めておかなければなりません。
問題がある従業員がいたとしても、何の根拠規定もなく懲戒解雇にすることなどはできないということです。

人事異動

人事異動としては、一般的に転勤や配置転換、出向、転籍などがありますが、これを業務命令によって行うためには一般的に就業規則の根拠規定が求められます。

賃金からの控除

労働基準法第24条には、賃金の支払いについて、「通貨払い」、「直接払い」、「全額払い」、「毎月1回以上の支払い」、「一定期日払い」のいわゆる「賃金支払いの5原則」が定められています。
このうちの1つである「全額払い」の原則により、賃金はその全額を支払わなければならず、社会保険料や源泉所得税など法令に基づくもの以外は勝手に控除することはできないことになっています。
例えば、社宅の家賃や財形制度の積立金のようなものを賃金から控除するためには、賃金控除に関する労使協定を締結するとともに、就業規則にも労使協定により控除する旨の規定が必要になります。

休業手当を平均賃金の6割で支払うこと

労働基準法第26条では、休業手当について、「使用者の責に帰すべき事由による休業の場合においては、使用者は休業期間中、当該労働者にその平均賃金の100分の60以上の手当を支払わなければならない。」とされていますが、雇用契約関係で考えた場合、民法第536条第2項では、「債権者の責めに帰すべき事由によって債務を履行することができなくなったときは、債権者は反対給付の履行を拒むことができない。」(言い回しが複雑ですが、要は全額の支払いが必要ということ)とされています。

法律上の整理で言えば、この民法第536条第2項は任意規定であるため、これを適用させないためには、就業規則や労働協約などで休業手当については平均賃金の60%のみ支払う旨の特約を設けておかなければなりません。
ただし、就業規則で平均賃金の60%のみ支払う旨の特約を設けていたとしても、「使用者の責に帰すべき事由」などの状況を鑑みて、民法第536第2項の適用排除を認めなかった判例もあります。(いすゞ自動車(雇止め)事件・東京地裁平成24年4月16日判決)