農業経営者の労働力確保に関する課題と解決策

農業経営者の労働力確保に関する課題と解決策

近年、日本の農業分野では深刻な人手不足が続いています。高齢化する農業従事者、若者の農業離れ、そして厳しい労働環境などが相まって、多くの農業経営者が「採用ができない」「労働力が確保できない」「定着が悪い」といった課題に直面しています。

鹿児島をはじめとする農業が盛んな地域では特に、安定した労働力の確保が事業継続の鍵となっています。本コラムでは、農業分野における労働力確保の課題と、社会保険労務士の視点からの具体的な解決策についてご紹介します。

目次

農業経営者が抱える労働力に関する主な課題

採用の難しさ

農業分野では、求人を出しても応募が少なく、採用活動が難航するケースが多く見られます。原因としては以下のような要因が考えられます。

・農業のイメージ(きつい、汚い、危険など)の払拭ができていない
・求人媒体の選定や求人票の作成が適切でない
・給与や勤務条件が他業種と比較して見劣りする場合がある
・農業の専門性や魅力を求職者に伝えきれていない

労働力の季節変動

農業は季節によって必要な労働力が大きく変動します。繁忙期には多くの人手が必要になる一方で、閑散期には仕事量が減少するため、年間を通じて安定した雇用を提供することが難しいという特性があります。

定着率の低さ

せっかく採用できても、以下のような理由から従業員の定着率が低いことも大きな課題です。

・労務管理体制が整っていない
・キャリアパスや成長機会が見えにくい
・給与体系や福利厚生が不十分
・労働環境や労働時間の問題


社会保険労務士からの解決策

これらの課題に対して、社会保険労務士として以下のような解決策を提案します。

1. 多様な雇用形態の活用と適切な労務管理

短時間労働者の活用

繁忙期と閑散期の労働力の変動に対応するために、パートタイマーやアルバイトなどの短時間労働者を効果的に活用することができます。ただし、労働基準法や社会保険制度における取り扱いには注意が必要です。

・労働条件の明示(労働時間、賃金、休日など)
・適切な労働時間管理
・社会保険の適用要件の確認
・有給休暇付与のルール

これらを正しく理解し運用することで、コンプライアンスを確保しながら柔軟な人材活用が可能になります。

外国人労働者の受け入れ

昨今、農業分野では外国人労働者の受け入れが増加しています。特定技能や技能実習などの制度を活用することで、人手不足を解消する選択肢となりますが、在留資格ごとに異なる就労条件や給与計算など、複雑な体系への対応が必要です。

・在留資格に応じた就労条件の理解
・多言語対応の労務管理
・文化的な違いに配慮した職場環境づくり
・適切な給与計算と社会保険手続き

    特に外国人労働者の受け入れでは、専門的な知識を持つ社会保険労務士のサポートが大きな助けとなります。

    2. 効果的な採用戦略の構築

    採用媒体の最適化

    農業分野での採用では、一般的な求人サイトだけでなく、農業専門の求人媒体やSNS、地域コミュニティなど、多様なチャネルを活用することが効果的です。

    魅力的な求人票の作成

    農業の持つ独自の魅力や、その農園・法人ならではの強みを明確に打ち出した求人票の作成が重要です。特に以下の点に注目して作成しましょう。

    ・仕事の具体的な内容と魅力・研修制度や技術習得の機会・農業の社会的意義や環境への貢献キャリアパスの見える化

      採用成功事例の共有

      実際に農業分野で採用に成功している事例を学び、自社の採用戦略に取り入れることも有効です。例えば、新規就農者のインターンシップ制度の導入や、地域の教育機関との連携なども採用チャネルの拡大につながります。

      3. 従業員の定着率向上のための取り組み

      労働環境の整備

      農業の労働環境は厳しい面もありますが、以下のような取り組みにより改善が可能です。

      ・適切な休憩時間の確保
      ・熱中症対策などの健康管理・機械化による重労働の軽減快適な休憩スペースの整備

        給与体系と福利厚生の見直し

        能力や成果に応じた給与体系の構築、福利厚生の充実により、従業員のモチベーション向上と定着率の改善が期待できます。

        ・明確な評価制度と昇給の仕組み
        ・住宅手当や通勤手当などの各種手当・家族も参加できる社内イベント健康診断など健康管理サポート

        キャリア形成支援

        農業技術の習得やマネジメントスキルの向上など、従業員のキャリア形成を支援する仕組みづくりも重要です。

        ・体系的な研修プログラム
        ・資格取得支援
        ・将来の独立就農に向けたサポート
        ・経営参画の機会提供

        4. 農福連携の活用

        障害のある方々の就労機会創出と農業の人手不足解消を同時に実現する「農福連携」も注目すべき選択肢です。福祉サービス事業所と連携することで、安定した労働力の確保と社会貢献を両立できます。

        ・福祉サービス事業所との連携構築
        ・障害特性に応じた業務の切り分け
        ・処遇改善加算のサポート
        ・助成金等の活用

          社会保険労務士のサポートで実現できること

          農業経営者の皆様が上記のような取り組みを実践するにあたり、社会保険労務士は以下のようなサポートを提供することができます。

          1. 労務管理の適正化:労働法令に沿った就業規則の整備、労働時間管理の仕組み構築
          2. 給与計算と社会保険手続き:外国人や短時間労働者など多様な従業員の給与計算と手続き
          3. 助成金の活用:農業分野で活用できる各種助成金の申請サポート
          4. 人事制度の構築:評価制度や給与体系の設計・導入支援
          5. 採用支援:求人票作成アドバイス、面接同席など採用プロセスのサポート
          6. 労務トラブル対応:従業員との労務トラブルの予防と解決サポート

          鹿児島県内はもちろんのこと、全国の農業経営者の皆様に対して、オンラインも活用しながらきめ細かなサポートを提供することが可能です。

          我々は、法律だけではない、人の気持ちに配慮したアドバイスを行うことはが可能です

          まとめ:持続可能な農業経営のために

          農業の人手不足問題は、単なる「人が集まらない」という表面的な課題ではなく、労務管理体制や職場環境、採用戦略など、さまざまな要素が複雑に絡み合った経営課題です。

          社会保険労務士による専門的なサポートを活用することで、コンプライアンスを確保しながら、人材の採用・定着・育成の好循環を生み出し、持続可能な農業経営の基盤を構築することができます。

          農業の未来を支える人材確保でお悩みの経営者の皆様、ぜひ一度、我々「上岡ひとみ経営労務研究所」へご相談ください。貴社の経営状況や課題に合わせた、具体的な解決策をご提案いたします。


          法改正や制度変更も頻繁に行われる労務管理。専門家に相談することで、リスクを回避しながら効果的な人材確保・定着の仕組みづくりが可能になります。初回相談は無料で承っておりますので、お気軽にお問い合わせください。

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