建設業の労務管理サポート

2023年9月1日

建設業の労務管理について

建設業は多重構造の産業です。一つ一つの職種が特化されています。ですから、お一人でお仕事をされている方から、何百億円の巨大資本まで規模も職種も多様性に満ちているのが、特徴です。
それぞれの規模や特徴において、それに合った就業規則や労務管理が必要だと思います。

1年変形。それでもいいが、それでいいのか?

建設業というと、7時間20分の1年変形の労働時間アルアルです。様々な横の連携も取りながら仕事をする建設業ですから他の企業と足並みそろえないと仕事が滞る、それもアリです。
しかし、先進的な企業の中には、完全週休2日制を取り入れる企業もでてきています。
また、好景気の風を受けて、逆に労働日数を増やす企業も出てきています。1年変形ですと「280日の壁があります(1年変形労働時間制の上限日数)」。そこで、1年変形ではない別の労働時間制を採用することで、280日の壁は乗り越えられます。労働時間においても、それぞれの企業の独自性をだすことが可能になります。

働き方改革「労働時間の把握の義務化」

  1. 平成31年4月から出退勤の時刻管理が義務付けられました。建設業においては、出勤簿に印鑑押すだけとか、出面表で管理しているという企業が少なくありませんので、出退勤の時刻管理要注意です。
  2. また、直行直帰という微妙な問題があります。直行は直行でも資材を運ぶというミッションが課せられている場合は、直行とはなりません。そこは労働時間でとるべきです。
  3. 朝のラジオ体操と朝礼。出席が義務付けられている場合は、これも労働時間となります。今日1日の作業工程の説明や安全教育の一環も兼ねていて、出席が義務付けられている場合は、大切な要所となる時間でもありますので、勤務時間としてお取りいただきたいと思います。

民法の改正により令和2年4月から所定時間外労働の請求権が2年から5年に延長することが決まっています。仮に1日7:20で、日当10000円の労働者の、朝のラジオ体操と朝礼の時間が20分、サービス残業であったと仮定すると、20分×280日×5年不払いとなっていたとしたら約80万円の支払いとなります。一日1時間のサービス残業だと5年間では数百万円から1千万円という金額になる時代がすぐそこに来ています。
 
また、残業不払いに付随して、残業の計算において注意いただきたい手当に「現場手当」なるものがあります。企業にもよりますが、施工管理者として現場を受け持った時に支給される手当であることが多いのですが、「現場を受け持った時に出る手当」であれば、それは割増単価に参入すべき賃金です。しかし、「現場を持つことによって残業時間が発生するための残業代」としての支給ならば、割増単価に参入しなくてもよい賃金となります。何に対する手当なのかを明確に示すべきでしょう。

年次有給休暇5日間の強制付与

雨天時の休みに年次有給休暇をあてる場合は、いくつかのルールがあります。①取得が従業員さんの自由意思であること ②終日の年休は前日までに伝えておくことです。本人の希望があれば、雨天時の年休処理も可能です。本人の希望がない場合に備えて雨天時の作業を決めておきましょう。

人の確保が難しい業種です。まずは、社内の定着を図ることが何より重要となります。定着を図るために就業規則を見直し、法律通りの労務管理がなされることとは、従業員の不満を防止する「基本のき」ではないかと思います。