5/19改正の雇用調整助成金について

 はじめに

新型コロナウイルス感染拡大の影響によりやむを得ず従業員に休業を命じなければならない会社・個人事業主が増えています。厚生労働省は会社・個人事業主が支払う休業手当額の一定割合を政府が肩代わりする「雇用調整助成金」の特別措置を実施しています。

雇用調整助成金は従業員に直接支給されるものではありませんが、会社が従業員に支給する休業手当の原資になりますので、雇用を維持しやすくなります。

従業員の解雇だけは回避したい事業主にとって是非とも活用したい助成金です。
今回は雇用調整助成金に関する最新情報をご紹介していきたいと思います。

①雇用調整助成金とは

雇用調整助成金は景気の後退等経済上の理由から事業活動の縮小を余儀なくされた事業主が従業員に一時的な休業・出向・教育訓練を実施した事業主に休業手当などの費用を一部助成する制度です。

今回の雇用調整助成金の支給対象は、新型コロナウイルス感染拡大の影響によって業績が悪化し、従業員を計画的に休業させ休業手当を支払っている事業主です。
休業手当とは、会社都合で従業員を休業させた際に、法律で労働者への支払いが義務付けられている手当です。
「賃金の3カ月平均(平均賃金)の6割以上」を支払う必要があります。  (労働基準法第26条、同法第1項)

②5月19日の大きな改正点は?

国内外における新型コロナウイルス感染症の発生状況の変化を踏まえて各界からの要請を受けて事業活動を休止した事業主に対するさらに支援するために、これまでの特例措置に加えて手続きの簡素化を図ることとしたものです。
実際に休業手当額による助成額が可能になりました。また小規模事業主は「実際に支払った休業手当額」による算定をすることができるようになりました。

イ、休業手当計画届の提出が不要になり、雇用調整助成金申請のみの手続きになりました。
ロ、平均賃金額の算定方法が、これまで「労働保険確定保険料申告書」を用いて算定していましたが「給与所得・退職所得の所得税徴収高計算書」等でも算定できるようになり、また「所定労働日数」について、これまで過去1年分の実積を用いて算定していましたが、休業実施前の任意の」1か月分に基づいて算定できるようになりました。
ハ、5月19日以降も、これまでの助成率の引き上げ、生産量要件の緩和などの特例措置を利用することができます。
二、5月19日付けの特例措置は、5月19日の雇用調整助成金支給申請から適用されます。
なお5月18日以前に休業した場合であっても、5月19日以降に申請するのであれば適用されます。

ちなみに5月19日の改正点(特例措置)は次のようになっています。

ⅰ、休業等実施計画届の提出を不要とする。
ⅱ、小規模自業種の手続き簡略化(休業手当支給実績での算定、簡易版様式)
ⅲ、平均賃金額の算定方法の簡素化
ⅳ、雇用調整助成金支給申請書の提出期限緩和
ⅴ、オンライン申請

◎中小企業・小規模事業主の申請手続きの簡素化について
雇用調整助成金の支給申請にあたっては、これまでは従業員1人当たりの平均賃金額を用いて助成額を算定していましたが、今後、おおむね従業員20人の中小企業・小規模事業主については、「実際に支払った休業手当額」から簡易に助成額を算定できるようになりました。
具体的には、助成額=実際に支払った休業手当額×助成率の算式によって算定することができます。

◎雇用調整助成金の上限が8,330円から15,000円(月額の上限は33万円)に引き上げられ、4月1日以降に開始された賃金締切期間に遡って9月まで、企業規模や雇用形態にかかわらず適用されます。
また解雇等を行わずに雇用を維持した中小企業の場合、助成率が4月に遡って、平均賃金の6割を超える休業手当を支払ったときに、平均賃金の6割を超える部分について10分の10に引き上げられました。
これにより中小企業は休業手当を支払い安くなります。

◎休業期間中の賃金の支払いを受けることができなかった労働者を対象に、労働者個人が直接申請し、労働者に直接支給される新型コロナウイルス感染症対応休業支援金(仮称)が創設されます。さまざまな事情により雇用調整助成金を活用しない雇用主が多いため、労働者個人が申請できる制度が作られることになりました。

ところが新設される休業支援金と雇用調整助成金の関係について問題になるのは、休業支援金を貰って下さいと言い、休業手当の支払いを拒む雇用主が出る可能性があることです。
雇用主にしてみれば、手続きに手間がかかり、いつ支給されるかわからない雇用調整助成金を申請するよりも労働者に休業支援金を申請してもらう方が負担が少なく、労働基準法による休業手当の最低額は平均賃金の6割であるのに対して、休業支援金は休業前の賃金の8割ですから、労働者としても休業支援金を申請する方が有利になるケースもあるため、各地で混乱が見られます。

③雇用調整助成金を活用する上での注意点

ⅰ、緊急融資や給付金の活用も併用する

雇用調整助成金は企業が従業員に休業手当を支払った後に支給されるものであり、助成金の申請から支給されるまでに1~2か月程度の時間がかかりますので、そしの間は事業主が立替えるような形になります。
したがって手元資金に余裕がない企業にとって大きな負担になってしまいます。諸経費がかさむ上に売上高が減少の一途をたどるとなれば、休業手当を支払うことができないまま、廃業・倒産を余儀なくされるケースもあります。
当面の手元の資金繰りを賄うためには、公的金融機関(日本政策金融公庫の新型コロナウイルス感染症特例貸付を含む)や民間金融機関に相談するのが良いと思われます。国を挙げて緊急事態における政策に基づいているため、相当する間口を広げて融資が行われています。

また雇用調整助成金の他にも「小規模事業者持続化給付金新型コロナ特別対応型」として中小企業向けに200万円を上限とした給付金もありますので、元資金に少しでも不安がある場合は、これらの融資や給付金を雇用調整助成金と併用することをお勧めします。

ⅱ、他の助成金を利用する方が良い場合もあります。

雇用調整助成金の助成率は大企業の場合3分の2あるいは4分の3なっていますので、残りは会社が負担することになります。大企業といえども先行きの見通しが立たない状況のなかで、できる限り負担を軽減したいところです。
たとえば「小学校休業等対応助成金」は新型コロナウイルス感染症対策により小学校が休業した児童の保護者としての労働者あるいは新型コロナウイルスに感染した児童等の保護者としての労働者に給与全額の休暇(年次有給休暇を除く)を付与した場合、その費用の10分の10が支給されます。大企業や休業要請のない会社であれば雇用調整助成金よりもこの助成金を申請する方が会社の負担が少なく有利になります。

ⅲ、雇用調整助成金の申請には提出書類が多く手続きが複雑で大変ですが、諦めずに専門家である社会保険労務士に相談を‼

雇用調整助成金の申請手続きが大幅に簡素化されたとはいえ、元々提出書類が多く手続きが複雑で、中小企業の経営者にとって大変な負担になります。企業によっては就業規則などの社内規程が整備されていないところもあります。
そのようなときは、助成金をはじめ労務管理の専門家である社会保険労務士に相談することにより、余計な手間をかけずにスムーズに申請することができるように、総合的な見地からアドバイスしてくれます。