時間単位の年次有給休暇を導入する際の注意点
導入・運用上の注意点
時間単位の年次有給休暇を導入・運用していくにあたっての主な注意点は次のとおりです。
所定労働時間に1時間未満の端数がある場合
労使協定のところでも説明しましたが、所定労働時間が7時間30分などであるなど1時間未満の端数がある場合には、時間単位の年次有給休暇の管理上は1時間単位に切り上げることになっています。
仮に、所定労働時間が7時間30分であれば、所定労働時間が8時間である場合と同様に、
取得請求に応じて1年間で40時間(8時間×5日)までは時間単位の年次有給休暇を取得させることができます。
1時間未満の端数を1時間の単位に切り上げるのは、分単位の年次有給休暇の取得が認められていないこと、
また、労働者の不利益にならないためですが、所定労働時間に1時間未満の端数がある場合には、
単純に所定労働時間×5日を上限時間にしないように注意してください。
時季変更権
時間単位の年次有給休暇の取得請求があった場合、希望する日時に取得させることで事業の正常な運営が妨げられると判断するときは、通常の日または半日単位の年次有給休暇と同様に、使用者はその日時を変更することができます。
(この使用者の権利を「時季変更権」と言います。)
ただし、時間単位での取得請求を日単位の取得請求に変更することはできませんし、
その逆も認められませんので注意してください。
支払うべき賃金額
時間単位の年次有給休暇取得中の1時間分の賃金額は、
次のいずれかについてその日の所定労働時間数で割った額になります。
①平均賃金
②所定労働時間労働した場合に支払われる通常の賃金
③標準報酬日額(労使協定が必要)
上記、①~③のいずれによるかは、日単位による取得の場合と同様とし、就業規則に定めることが必要です。
繰り越しがある場合
時間単位の年次有給休暇について前年度から繰越しがある場合であっても、
取得させられるのはその繰り越し分も含めて5日分以内となります。
例えば、1日の所定労働時間が8時間である従業員についての年次有給休暇が次のとおりであるとします。
・前年度から繰り越した年次有給休暇:10日+5時間
・当該年度に新たに付与された年次有給休暇:20日
この場合、当該年度の年次有給休暇は、30日+5時間になりますが、5時間分を繰り越しているからと言って、
5日分(8時間×5=40時間)に5時間を加えて45時間まで取得させられるわけではありません。
取得させられるのは、あくまで、5日分(8時間×5=40時間)以内になりますので注意してください。