4月から中小企業にも適用されている同一労働同一賃金 最近の最高裁判決

2023年10月31日

同一労働同一賃金を見る人物

昨年の4月1日から、大企業のパートタイム労働者、有期雇用労働者、派遣労働者、および、中小企業の派遣労働者について同一労働同一賃金が適用されているところですが、今年の4月1日からは中小企業のパートタイム労働者、有期雇用労働者にも適用されています。

あらためて、この同一労働同一賃金のポイントを挙げるとすれば、次の3点になります。

・不合理な待遇差の禁止

・労働者に対する待遇に関する説明義務などの強化

・行政による事業主への助言・指導等や裁判外紛争解決手続(行政ADR)の整備

上記についてどのように対応すべきかについては、厚生労働省のリーフレットや「同一労働同一賃金ガイドライン」(短時間・有期雇用労働者及び派遣労働者に対する不合理な待遇の禁止等に関する指針)などで解説されていますが、少し読んだだけではなかなか理解できるものではありません。

そこで、今回は同一労働同一賃金において、どのようなケースが不合理な待遇差とされ、また、合理的な待遇差とされるのかについて、次の3つの最高裁判決をもとに確認していきたいと思います。

①大阪医科薬科大学事件・2020年10月13日 最高裁判所第三小法廷判決
賞与および私傷病による欠勤中の賃金について、通常の労働者(教室事務員である正職員)には支給し、有期雇用労働者(教室事務アルバイト職員)には支給しないことが不合理であるのか否かが争われた事案

大阪医科薬科大学事件事案判決内容

②メトロコマース事件・2020年10月13日 最高裁判所第三小法廷判決
退職金について、通常の労働者(売店業務に従事する正社員)には支給し、有期雇用労働者(売店業務契約社員)には支給しないことが不合理であるのか否かが争われた事案

メトロコマース事件事案判決内容

③日本郵便(東京・大阪・佐賀)事件・2020年10月15日 最高裁判所第一小法廷判決
各種手当や休暇などについて、郵便業務などに従事する通常の労働者(正社員)には付与し、職務の内容などに相応の相違がある有期雇用労働者(契約社員)には付与しないことが不合理であるのか否かが争われた事案

日本郵便(東京・大阪・佐賀)事件事案判決内容

以上、同一労働同一賃金に関する最近の最高裁判決をご紹介しましたが、大阪医科薬科大学事件やメトロコマース事件では、賞与や私傷病による欠勤中の賃金、退職金について争われており、正職員・正社員と有期雇用労働者とでは職務内容などに一定の相違があること、また、賞与や私傷病による欠勤中の賃金、退職金の性質・目的から、不合理な待遇差ではないと判断されています。

一方、日本郵便(東京・大阪・佐賀)事件では、扶養手当などの各種手当について争われており、正社員と契約社員とで職務内容などに一定の相違があるとしても、契約社員が各種手当の支給要件を満たしているにもかかわらず、各種手当を支給しないのは不合理な待遇差であると判断されています。

裁判になれば、必ずしも上記のような判決になるとは限りませんが、基本給や賞与、退職金などと、各種手当については不合理な待遇差となるのかどうかの判断基準が異なることは理解しておく必要があります。

中小企業においては、同一労働同一賃金に関する対応がまだ完全ではないというところも多いと思いますが、厚生労働省のリーフレットや同一労働同一賃金ガイドラインを十分に理解し、上記以外の判例も確認したうえで整理を進めることが必要です。