日勤契約従業員が翌日の朝まで働いた場合の残業代の計算方法

2023年10月31日

over time work、残業イメージ

2日にわたる勤務における残業代の計算方法の主なポイントは、法定休日が絡まなければ、22時から翌日5時までは時間外労働と深夜労働の割増率を合算して計算すること。また、2日目の始業時刻以降も続く残業については割増率を加算する必要はないこと。

Q. 先日、弊社において大きなトラブルが発生したため、やむを得ずその業務にかかわる担当者数名に翌日の朝まで仕事をしてもらいました。これまで22時や23時くらいまでの残業はあったのですが、日をまたぐ残業は初めてなのでこの場合の残業代の計算方法を教えてください。

A. 仮に御社の就業時間を9時から17時30分まで(休憩1時間、実労働時間7時間30分)とし、ある日(平日)、従業員に通常勤務のあと翌日(平日)の朝10時まで働いてもらったとします。この場合の残業代は次の①から⑤までの合計額になります。

①1日目の17時30分から18時まで

1日の法定労働時間である8時間を超えない残業、いわゆる法定内残業に該当するため、

通常の1時間あたりの賃金×0.5時間

※会社によってはこの法定内残業についても時間外労働として割増賃金を支払っているところもあります。

②1日目の18時から22時まで

時間外労働(割増率25%以上)に該当するため、

通常の1時間あたりの賃金×1.25以上×4時間

③1日目の22時から2日目の5時まで

時間外労働(割増率25%以上)+深夜労働(割増率25%以上)に該当するため、

通常の1時間あたりの賃金×1.5以上×7時間

④2日目の5時から9時まで

時間外労働(割増率25%以上)に該当するため、

通常の1時間あたり賃金×1.25以上×4時間

⑤2日目の9時から10時まで

通常の労働時間に該当するため、

通常の1時間あたりの賃金×1時間

※残業が始業時刻(今回の設定では9時)に食い込んだ場合、始業時刻以降は時間外労働にしなくてもよいことになっています。


なお、上記ではより簡単に説明するために残業中に与える休憩時間は考慮しておらず、また、1日目と2日目がともに平日という設定にしています。 休憩時間は上記の計算から除く必要がありますし、仮に1日目または2日目が法定休日(多くの会社では日曜日)である場合には、その労働時間は休日労働として35%以上の割増率が適用になるなど計算方法は少し変わりますので注意してください。

以下では、今回のケースのようないわゆる継続勤務の考え方が示された厚生労働省の通達を紹介しています。


わたしがナビゲートします

さらに詳しく…

厚生労働省の通達による残業代の考え方

2日にわたる勤務は1勤務と考える

厚生労働省の通達(その1)/昭和63年1月1日基発第1号・婦発第1号

この通達によると、継続勤務が2暦日にわたる場合には、たとえ暦日を異にする場合でも1勤務として取り扱い、当該勤務は始業時刻の属する日の「1日」の労働とすることとされています。 つまり、1日目から2日目になる深夜0時で労働時間をいったんリセットすることなく、そのままカウントするということです。

2日目の始業時刻以降も続く残業については通常賃金の支払いでOK

厚生労働省の通達(その2)/昭和26年2月26日基収第3406号、平成11年3月31日基発第168号

この通達によると、翌日の所定労働時間の始期までの超過時間に対して労働基準法第37条の割増賃金を支払えばこの第37条の違反にはならないとされています。 言い回しがややこしいですが、言い換えれば、2日目の始業時刻以降も続く残業については時間外労働とはせず通常の賃金を支払えばよいということです。

休日労働となるのは深夜0時から

厚生労働省の通達(その3)/平成6年5月31日基発第331号

この通達によると、法定休日である日の午前0時から午後12時までの時間帯に労働した部分が休日労働となるとされています。
つまり、休日労働となるのは、法定休日の日になる深夜0時から翌日の深夜0時までの24時間の間の労働であるということです。(ここでは詳しく説明しませんが、この通達で言う午前0時と午後12時はともに深夜0時のことを指しています。)


専門家からのひとこと

2日にわたる勤務における残業代の計算方法の主なポイントを挙げるとすれば、法定休日が絡まなければ、22時から翌日5時までは時間外労働と深夜労働の割増率を合算して計算すること、また、2日目の始業時刻以降も続く残業については割増率を加算する必要はないということです。

あと、細かなことを言えば、日勤帯だけ働くことを前提に契約している従業員に、翌日までの長時間残業を指示するためには、就業規則や雇用契約書には最低限、「就業時間は業務上の都合により変更する場合がある。」などと記載しておき、場合によっては夜勤もあり得ると説明をしておくべきでしょう。

給与計算に関するご相談はこちら

所長解説

気軽にお問合せください

各種ご相談、お問い合わせはこちら↓

お問合せ Tel
お問合せ form
お問合せ chat