企業と人を活かす「雇わない経営」とは ?社労士が考えるこれからの採用

2024年3月4日

企業と人活かす「雇わない経営」とは ?社労士が考えるこれからの採用

毎年、採用にいくらのコストをかけているでしょうか。

人材不足が叫ばれる昨今、「お金をかけなくてはいい人を採用できない」という風潮が生まれています。しかし育成、定着に時間をかけ、休みや福利厚生を充実させても「急にいなくなる社員」は後を絶ちません。
そのうちライバル会社の「活躍している若手」が目に付くようになり、一体どうすれば自分の会社に優秀な人材が集まってくるのだろう…と悩みながら、日々の経営に追われていらっしゃるはずです。

今回はそのような経営者さまに、社労士の立場から「雇わない経営」をおすすめさせていただきます。

二極化する中小企業の採用戦略

新型コロナで世の中は大きく変化しました。リモートワークや多様な働き方の浸透、「働くこと」に対する意識変化が起きています。職を探す人々の価値観は、これまで以上に多様化しています。社会情勢の変化は労働法の法改正にもつながり、労働時間やメンタルヘルスなど、ブラック企業を是正する動きも活発になりました。

またコロナ禍は、IT化、情報化を急速に押し進めました。結果、働く人たちは私たちが思う以上に「労働法、雇用契約、各社の労働環境」について敏感に情報収集を行っています。

いわゆるリーガルテックといわれる法律サービスも続々登場し、会社と従業員は「雇う・雇われる」という概念ではなく、双方が合意してスキルをやり取りする関係性を持つ流れにシフトチェンジが進んでいます。

この流れに右往左往するのではなく、「人を雇い続ける経営」と「人を雇わない経営」のどちらかに舵を切り、積極的な人材獲得をすべきではないでしょうか。

「人を雇い続ける経営」

  • 自社に合う人材を正社員として雇用する
  • ビジョンの共有に力を入れ、定着に力を入れる
  • コア人材として活躍してもらえる環境を構築する
  • 全社員で会社を成長させることを目指す

「人を雇わない経営」

  • フリーランスで活躍する優秀な人材とパートナー契約を結ぶ
  • 育成やマネジメントが不要な、自立した人と組む
  • スキルを存分に発揮してもらえる環境を構築する
  • 事業フェーズに合わせて柔軟にパートナーシップを調整する

周囲と足並みを揃えていては採用負けしてしまう。そう気付いた経営者は具体的な行動を起こされているように感じます。あなたの会社はどちらが向いていますか?

経営者の「頭の切り替え」ができればモデルチェンジは可能

もちろん雇わないことがすべての課題を解決するわけではありませんし、企業風土やステージによっては合わないこともあります。

しかし、「成長を続け、雇用を生み出すこと」がよいこととされてきた既存の経営思考では、無理が生まれつつあるのも事実です。従業員側の行動や意識が大きく変わった以上、雇用側にも同じように変化が求められます。

雇用を増やせば増やすほど利益は減るのに、労務トラブルのリスクは増えていくという状態から脱し、雇用する側も、働く側も、自分の意思に沿った関係性を築けることが重要だと考えます。

以下に合致する要素があれば、「雇わない経営」で採用課題が解決する可能性があります。

正社員の人件費をペイするだけの売上が立ちにくい

雇用のコストは給与だけではありません。各種保険料や交通費、手当など相当な額になっているはずです。それを賄えるだけの売上がなければ、優秀な人材を雇用し続ける体力も続かなくなるでしょう。

未経験採用と育成に時間をかけにくい

「雇わない経営」の大きなメリットに、即戦力確保があります。これまで未経験者をじっくり育ててきた企業も、事業スピードの向上を考えると育成にリソースを割きにくくなっているのではないでしょうか。一定以上の職務経験を持つ人を優遇し、存分に能力を発揮してほしいという企業は実際に増加傾向にあります。

ITツールによる業務効率化が進んでいる

オフィスに出社する必要が少なく、かつITツールで進められる業務が多い企業は、「雇わない経営」に向いているともいえます。正社員ではなくてもきっちり業務を遂行してくれるスタッフは日本中にいます。BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)を活用するという手段も検討できます。


雇用以外の契約について知る

次の表は、「雇用契約」と「業務委託契約」「請負契約」の違いです。 メリットデメリットが浮かび上がってくることと思います。

雇用契約
(正社員)
業務委託契約
(法律行為ではない準委任契約
:民法第656条)
請負契約
①実態として使用者の指揮命令下で使用される(労働基準法第9条・労働契約法第2条第1項) ①委託業務に善管注意義務を負う
(民法第644条)
①仕事の完成義務(民法第632条)と契約不適合責任(民法第637条)を負う
②賃金は毎月1回以上、定期日に支払われる
(労働基準法第24条)
②業務の遂行自体に報酬が一定期間毎に支払われる ②仕事の完成に対して報酬が支払われる
(民法第632条)
③解雇は、客観的合理的理由と社会通念上の相当性が求められる
(労働契約法第16条)
③双方がいつでも契約解除できるが、相手方に不利な時期に契約解除した場合は相手方に損害賠償しなければならない
(民法第651条)
③請負業務が完成しない間は、注文者はいつでも損害を賠償して契約解除できる
(民法第641条)
  [例]クリーニング業の配送業務、システム機器のメンテナンス業務、日常の事務処理業務 [例]システム開発、物品の製造・加工、建築工事下請

ただし、安易に業務委託を探すのではなく、業務内容の洗い出しからする必要があります。その業務が業務委託契約の範囲内なのか、また本当に作業効率が上がるのかは、事前にジャッジしておきましょう。

「雇わない経営」がマッチした事例

専門知識が必要な業務を正社員ではなく「スキルの高い業務委託」に依頼することでチェック業務が減った。コスト的にも見合っていた。

「雇わない経営」がマッチしなかった事例

パート数名で行っていた業務の管理コストが高いことが課題だった。正社員化により管理が不要になり、品質も事業スピードも一気に向上した。


業務委託にできる業務は種類が決まっており、いくつかのルールも存在します。 自社で成果を出す方法を知りたい方は、一度社会保険労務士に相談することをおすすめします。


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気になる社会保険の加入

多様な形態で働く人が増えたとき、企業側が気になるのは社会保険の加入についてではないでしょうか。

社会保険加入対象従業員が100人以下の会社(2014年10月以降は50人以下の会社)においては、

出勤日数が通常の労働者の3/4未満 または、週の所定労働時間が通常の労働者の3/4未満の場合は社会保険の加入は不要となります。

社会保険加入対象従業員が100人を超える会社(2014年10月以降は50人超の会社) においては、賃金月額が88,000円未満(賞与・残業手当・通勤手当等を除く)または 週の所定労働時間が20時間未満の場合は社会保険の加入が不要となります。

賃金上昇時代だからこその、「雇わない経営」

これからの時代、正規雇用にこだわらずさまざまな雇用形態で人材を探すことの必要性を解説いたしました。

これから賃金はますます高騰していきます

最低賃金の大幅引き上げにより、玉突的に若者層の賃金水準が上昇しており、2023年の最低賃金は全国の加重平均で43円(4.47%)上昇しました。毎年4.47%上昇していくと、2028年には全国加重平均時給は1,249円となります。

少人数で利益の出る企業体質を目指す

これからは短時間パートや学生アルバイトを活用したり、業務委託、外注、副業などで働く人材をうまく活用し、少人数で利益の出る企業体質を目指す必要があります。


だからこそ、雇わない経営をおすすめしています。

自社の課題解決に、どのような人材が必要なのかを自社で洗い出せる

雇わない経営を導入すべきか、正しいジャッジができる

人材探しや契約運用、コントロールを受け持つ人事担当者がいる


上記のような企業は、ぜひ検討をしてみてください。
また上記の環境がととのっていない場合は、

プロにご相談ください。


社会保険労務士は多くの企業の事例を持っています

他社はどうしてる?
うちの会社のサイズなら、どれくらいのコストを掛けるべき?

などの疑問に具体的に回答いたします。

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インボイス制度のスタートや、テレワークの浸透などで、フリーランスの方々の意識も大きく変わってきました。これから一層、「企業と人材の手の組み方」にも多様性が求められていくでしょう。

採用手法は、時代によって変わるものです。私たちは人のプロとして常に最新の情報をアップデートし、若い人、優秀な人材へのアプローチ方法の研究を続けております。ぜひ一度、私たちにお悩みをお聞かせください。

所長解説

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