定年延長とシニア従業員のキャリア開発の考え方

2021年6月30日

先月、ご紹介したとおりですが、この4月に改正高年齢者雇用安定法が施行され、従業員が70歳になるまで就業機会を確保することが企業の努力義務になりました。

法改正対応や、以前から義務となっている65歳までの雇用確保に関する対応については先月の記事をお読みいただくとして、今回は、シニア従業員に活躍し続けてもらうためには、これらの法律上の対応のほかにどのような取り組みが必要であるのかについて解説していきたいと思います。

少子高齢化が加速する中、企業としてはいかに優秀な人材を確保していくのかが重要な課題になってきています。大企業でなければ今後、若年で優秀な人材を獲得することはさらに難しくなってきますので、自社の優秀なシニア従業員の流失を防ぐ、あるいは、他社で経験を積んだシニア人材を獲得していくことも積極的に検討していかなければなりません。

上記の法律上の対応としては、多くの企業で「定年引き上げ」や「定年制の廃止」などではなく、人件費などのコストを抑えることができる「継続雇用制度(基本的には再雇用制度)の導入」で対応しています。

再雇用制度が悪いというわけではありませんが、賃金を大幅に引き下げ、これまでの経験を活かせない業務に就かせるような再雇用制度しかないのであれば、優秀なシニア従業員に引き続き働けてもらうことは難しいと言えますので、会社に残る決断させるより魅力的な環境を整備していく必要があります。

さて、企業において終身雇用を守っていくことが難しくなってきているいま、経済産業省の『「人生100年時代」の企業の在り方~従業員のキャリア自律の促進~』(平成29年12月)によると、企業の役割は「雇い続けることで守る」から、「社会で活躍し続けられるよう支援することで守る」に変わっていかなければならないとされており、具体的には、次の取り組みを進めいく必要があるとしています。

①キャリア開発支援

「キャリア開発」とは、一般的に、働く個人一人ひとりの職務や能力・スキルを中長期的に計画することを言いますが、定年後も企業に依存せず、自身で判断・行動できる人材を育成するためには、従業員ごとに定年前からキャリア開発を支援していく必要があります。

このキャリア開発を支援していく方法としては、次のような取り組みが挙げられます。

・定年よりもかなり前から(例えば30歳から)、今後のキャリアを考えるための研修を定期的に実施する。

・これまでのキャリアに応じて適切な部署へ異動できるようにする。

・成果や能力に応じて給与を支給、昇給させる。

・スキルアップにつながる兼業や出向などを促進する。

②リテンションの強化

「リテンション(retention)」とは、直訳すると「保有」や「保持」ですが、人事上は「優秀な人材を確保する」という意味合いで用いられることが多いです。このリテンションを強化していく方法としては、次のような取り組みが挙げられます。

・再雇用でも本人の能力や意向を踏まえて多様なポジションを用意する。

・ダイバーシティマネジメント(多様な人材を積極的に活用し、経営に活かしていくこと)を理解させるための研修を実施する。

・定年よりもかなり前から(例えば50歳から)、シニア層として求められることなどについてマインドチェンジ(意識改革)させるための面談や研修を実施する。

③新たな関係性の構築

「新たな関係性の構築」とは、単に会社と従業員という雇用契約上の関係だけでなく、会社として従業員が社外へ転進することなどを支援する関係性を構築することを意味します。この新たな関係性を構築する方法としては、次のような取り組みが挙げられます。

・早期退職者に対して退職金を上積みするなど、退職者の処遇を充実させる。

・転職希望者に対して転職先を斡旋する。

・同業他社とネットワークで求人情報を共有する。

そもそも、企業の役割として「雇い続けることで守る」から、「社会で活躍し続けられるよう支援することで守る」という考え方自体が、中小企業にとっては俄かに受け入れ難いと感じることと思います。

しかしながら、定年を迎える従業員としては所属する会社の規模を問わず、再雇用を選択することで賃金が大幅に低下し、これまでの経験を活かせない業務に就かされるくらいなら、少しでも良い待遇で迎えてくれる他社に行くか、自ら起業することを選択する者も増えてきています。

つまり、単に雇い続けることを約束するだけではもはや従業員は残ってくれない時代になってきたということです。

資金的に余裕のある大企業では、再雇用ではなく、定年引き上げや定年制の廃止などを実施するとともに、上記で説明した3つの取り組みも行うことができるため、逆に中小企業で危機感を持って考えていかなければならない問題であると言えます。

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