【社労士が解説】最低賃金の引上げと、106万円・130万円の壁対策

2024年6月7日

【社労士が解説】最低賃金の引上げと、106万円・130万円の壁対策

「年収の壁」という言葉をご存知でしょうか。

配偶者の扶養内でパートなどで働く人が、一定の年収額を超えると扶養を外れ、その結果収入が減る、という不思議な現象が起きてしまいます。その理由は扶養を外れたことで社会保険料の負担が生じ、手取りの収入が減るからです。これでは能力があり働きたいと思う人に制限を設けてしまうことになり、人手不足の要因とも指摘されています。

そしてこの年収の壁は、年々上がる最低賃金とも密接な関係にあります。それはなぜか。経営者や労務担当の方向けに、社労士が解説します。

特定社会保険労務士 上岡ひとみ
上岡ひとみ経営労務研究所 代表
特定社会保険労務士 上岡ひとみ

年収の壁 企業と従業員の負担は大きい

まず年収の壁について。年収の壁には106万円、130万円のふたつがあり、主に勤務する企業の規模で対象者が変わります。

【106万円の壁】

  • 配偶者の扶養に入り、従業員101人以上の企業などで働く人
  • 106万円を超えると扶養を外れてしまい、自ら厚生年金や健康保険の保険料を支払う必要が出てくる

【130万円の壁】

  • 配偶者の扶養に入り、従業員100人以下の企業など厚生年金などが適用されていない職場で働く人
  • 130万円を超えると扶養を外れてしまい、自ら国民年金や国民健康保険の保険料を支払う必要が出てくる

社会保険適用拡大スケジュール

上記は2024年5月現在の内容ですが、2025年以降、全業種の20時間以上の従業員に、社会保険の加入義務が検討されています。

現在社会保険に加入せずに扶養の範囲で働いている従業員に、

「うちは加入義務の適用企業になるので、週20時間以上かつ8万8000円以上であれば社会保険に入っていただきます。時間を伸ばしますか?それとも20時間未満で働かれますか?」

という決断を迫る必要が出てくるのです。

セミナー資料抜粋01

従業員としては、収入を上げたいという気持ちと、扶養から外れたくないという気持ちの板挟みになり、モチベーションの低下も心配されます。

顧問先企業からは実際に、

「扶養から外れるのなら、違う職場で働く」

と、退職を決断をする従業員が出てきたというケースもお聞きしています。

企業側でも「就業調整」による人手不足が加速しています。扶養の範囲内で働く人から労働時間を減らしてほしいと依頼されると、減らした分は採用でカバーする必要が出てきます。採用の難易度もあがっている中、苦しい状態が続いています。


懸念点は最低賃金の引き上げ

近年、年収の壁に新たな懸念事項が加わりました。最低賃金の引き上げです。2023年8月31日の「新しい資本主義実現会議」で「30年代半ばには1,500円」とされた最低賃金は、予想よりずっと早く到来することが想定されます。

最低賃金が上がると、どうなるでしょう。今までと同じ時間働いていると、今までより早く年収の壁に当たってしまうという現象が起きてしまいます。

また、最低賃金の大幅引上げにより、玉突き的に若年層の賃金水準が上昇します。これにより企業は人手不足と人件費増加というダブルパンチの課題に直面します。

人件費は、どれくらい増加しそうでしょうか。

まずは自社のパートさん、従業員さんの上限を確認していただきたいのですが、お問い合わせいただけましたら計算式などのご案内が可能です。

気軽にお問合せください

社会保険の適用拡大、国の対応は

社会保険の適用拡大に対応すべく、国は新たな助成金を出しています。

それがキャリアアップ助成金社会保険適用時処遇改善コースです。新たに社会保険の被保険者となったとき、賃金の総額を増加させる取り組みを行って恒常的な所得の増額が実現されたなら、助成金として50万円を支給しましょうというものです。

キャリアアップ助成金社会保険適用時処遇改善コース

  • 手当等支給メニュー
  • 労働時間延長メニュー

手当等支給メニューは、従業員に社会保険を適用させるときに「社会保険適用促進手当」の支給等により労働者の収入を増加させる場合に支給されます。

セミナー資料抜粋02

一見よい制度に思えますが、従業員数によってメリットが変わり、対象にならなかった従業員との処遇格差の調整などが必要になるため注意が必要です。被保険者の条件も詳しく見ていく必要がありますから、社会保険労務士にご相談いただくのがよいと思われます。


106万、130万の壁対策はプロにお任せ下さい

いまから賃上げの波が押し寄せ、 人手不足がますます課題になるでしょう。価値観の変化から働き方も多様化し、就業管理も煩雑になっていきます。個々の状況に合わせた「壁」のコントロールに、いまよりも多くの時間が割かれていくのは明白です。

上岡ひとみ経営労務研究所でも、多くの顧問先の「壁対策」を行っています。

必要書類・資料

委託業務に必要な賃金台帳、勤怠データ、就業規則、雇用契約書、直近3期の決算書などの資料を提出いただきます。

内容

最低賃金引上げ及び106万円・130万円の壁対策のご相談に対し、社会保険労務士が具体的な指導を行います。主に以下の項目をお引き受けしております。

  1. 賃上げ余力概算額表作成
  2. 新卒者の最低賃金チェック
  3. 在籍者の最低賃金チェック
  4. 「106万円の壁」対策相談・指導
  5. 「130万円の壁」対策相談・指導
  6. 社会保険加入の可否と対策相談・指導
  7. その他パート全般に関する相談
  8. 上記のアフター相談
  9. 雇用契約書作成の指導

上記の過程では、手続きはもちろん、就業条件の見直しや、就業規則の改定が必要になることもあります。小さな課題にも丁寧に対応しており、社労士目線でのご提案を行うことも多くございます。壁対策とあわせて、労務管理の基礎をととのえていただければ幸いです。


人材不足がいよいよ顕在化してきました。経営者の皆さまのご苦労は絶えないことでしょう。しかし私たちには打ち手があります。実績と一歩踏み込んだご提案で、顧問先件数216社の労務の最適化をはかりつづけております。

顧客満足度96%、労務相談以外のご相談も含めた年間相談件数は1万2000件の上岡ひとみ経営労務研究所に、一度ご相談ください。経営する以上終わりのない「人の課題」を一緒に乗り越えてまいりましょう。

所長解説
上岡ひとみ経営労務研究所 代表
特定社会保険労務士 上岡ひとみ
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