最低賃金を違反した場合のリスク
ご存知かと思いますが、毎年10月は最低賃金が改定される月です。
今日は最低賃金に違反している場合のリスクについてのお話です。
まず、最低賃金のおさらいです。最低賃金には産業や職種にかかわりなく都道府県内の事業場で働くすべての労働者に適用される「地域別最低賃金」と、特定産業の労働者にのみ適用される「特定最低賃金」の2種類があります。使用者(会社)はこの最低賃金以上の賃金を労働者に支払わなければならず、「地域別最低賃金」と「特定最低賃金」の両方が適用される労働者については高い方の最低賃金が適用されることになっています。
また、仮に最低賃金を下回る賃金で労働者と契約したとしても、その部分は無効となり、最低賃金で契約したものとみなされます。(最低賃金法第4条第2項)
さて、従業員に支払っている賃金が最低賃金を下回っている場合には次のようなリスクがあります。
①最大で過去2年分の差額を支払わなければならない。
従業員に支払っている賃金が最低賃金を下回っていれば、いずれは従業員からその差額の支払いを求められるか、労働基準監督署から是正勧告を受けることになります。
その際にポイントになるのが、差額を支払わなければならないのは直近の数か月分などではなく最大で過去2年分になるということです。
なお、この「最大で過去2年分」というのは、労働基準法で賃金請求権の消滅時効時間とされていた2年からきているもので、あくまで現在の整理です。2020年4月1日施行の改正労働基準法では、賃金請求権の消滅時効期間は2年から5年(当面は3年)に変更されています。そのため、2022年4月1日以降に支払う場合には過去2年分以上の期間が支払い対象になりますので注意が必要です。
②罰金がある。
労働基準監督署から是正勧告を受けても差額を支払わないなど、悪質な場合には、罰則として50万円以下の罰金(地域別最低賃金に違反)または30万円以下の罰金(特定最低賃金に違反)に処されます。
③会社のイメージが低下する。
差額の支払いや罰金以上にダメージがあるのが会社のイメージ低下です。コンプライアンスが重視されるいまの世の中で最低賃金に違反していることが発覚すれば、その会社で働きたいと思う人は減るでしょうし、取引先には不信感を持たれて付き合いを見直される可能性があります。
小さな会社であれば、最低賃金に違反していてもばれることはないと思われるかもしれませんが、全国の労働基準監督署では、毎年定期的に各事業所における最低賃金への対応状況を調査していますし、従業員が通報することもありますので、遅かれ早かれ、いずれは差額の支払いを求められることになります。
最低賃金は毎年の改正に注意して、必ず守るようにしてください。
なお、2020年10月から適用される最低賃金については、厚生労働省のホームページで確認できます。
【参考】地域別最低賃金の全国一覧/厚生労働省
【参考】特定最低賃金の全国一覧/厚生労働省