歩合給制を導入する場合の注意点

2021年6月30日

生産性向上や成果主義が叫ばれる中、営業系などの職種に就く従業員の給与体系を歩合給制に見直そうと考えている会社も多いと思いますが、今回は歩合給制を導入する場合の注意点についてお話ししたいと思います。

歩合給制を導入するにあたっては、次のような点に注意する必要があります。

①あわせて固定給を設ける

労働基準法第27条(出来高払制の保障給)では、「出来高払制その他の請負制で使用する労働者については、使用者は労働時間に応じ一定額の賃金の保障をしなければならない。」とされています。

つまり、労働基準法上は、歩合給制を適用する従業員が全く成果をあげなかった場合でも、そのことを理由に給与を一切支払わないという整理にはできないルールになっているため、一般的には歩合給とは別に固定給を設けて運用しなければなりません。

※労働基準法上の「労働者」に当たらない個人事業主と契約するのであれば、完全出来高制とすることは可能です。

なお、上記の労働基準法第27条上の「一定額」として、どのくらいの額を保障すべきなのかについては、通達(昭和22年9月13日発基第17号、昭和63年3月14日基発第150号など)によると、「通常の実収賃金とあまり隔たらない程度の収入が保障されるように保障給の額を定めること」とされています。

実務上は、「休業手当」が「平均賃金の6割」と定められていることから、出来高払制の保障給についても同様の水準にして運用することが一般的になっています。

②最低賃金を下回らないようにする

固定給+歩合給制を適用している従業員であっても、最低賃金は保障しなければなりません。

具体的には、次の計算式で求められる時間あたりの賃金額(時間給)が、都道府県ごとに定められている最低賃金を下回らないようにする必要があります。

(固定給の額÷1か月の平均所定労働時間数)+(歩合給の額÷1か月の総労働時間数(1か月の平均所定労働時間数+残業時間数))

※固定給の額からは、精皆勤手当、通勤手当、家族手当の額を除きます。

③残業代の支給が不要になるわけではない

歩合給は労働時間に比例して増える傾向がありますので、残業代は歩合給に含まれていると解釈する方もいらっしゃいますが、そのような整理にするためには、判例(最二判平成6年6月13日労判653号12頁)によると次の2つの要件を満たす必要があるとされています。

要件1:歩合給の額が実際の労働時間に応じて適切に増額されていること

要件2:給与明細上、通常の労働時間の賃金と残業代の賃金が明確に区別できていること

上記のように整理できていない限りは、固定給+歩合給制を適用している従業員が1日8時間または週40時間の法定労働時間を超えれば、次の計算式で求められる残業代を支払わなければなりません。

〔(固定給の額÷1か月の平均所定労働時間数×1.25以上)+(歩合給の額÷1か月の総労働時間数(1か月の平均所定労働時間数+残業時間数)×0.25以上)〕×残業時間

※固定給の額からは、通勤手当、家族手当、住宅手当などの額を除きます。

なぜ、歩合給部分の時間単価には0.25を乗じるのかと言えば、通達(昭和23年11月25日基収第3052号)によると、歩合給部分は労働時間を延長したことで成果につながっている側面があるため、時間単価に相当する部分(つまり、1.00部分)はすでに歩合給の中に含まれているものと考えてよいとされているためです。

歩合給制は、適用される従業員にとっては、成果が直接給与に反映されるなどのメリットもあれば、常に一定額の給与が保障されないなどのデメリットもあります。

従業員のデメリットが大きい場合には、歩合給制を導入することで離職率を高めるなど会社にとってマイナスに働くことがありますので、導入にあたっては、適用する従業員にどのような影響があるのかを十分精査することが必要です。

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