2022年1月から始まる65歳以上の兼業・副業者への雇用保険適用とは?

2023年10月31日

雇用保険資格取得届 雇用保険 鹿児島 社労士 鹿児島 上岡

65歳以上の雇用保険の適用については、2016年12月31日までは65歳になる前から雇用されている事業所で65歳以降も引き続きその事業所に雇用され、一定の要件を満たす場合のみ被保険者(高年齢継続被保険者)になれましたが、2017年1月1日からは65歳以上の労働者が新たな会社で雇用される場合にも一定の要件を満たす限り被保険者(高年齢被保険者)になることができるようになっています。

つまり、少子高齢化が進む中、シニア労働者が安心して働けるように法改正が行われているということですが、さらに、来年2022年1月1日からは、65歳以上の兼業・副業者の雇用保険の適用に関するルールが変更されることになっていますので、今回はこの内容について解説したいと思います。

まず、現状における雇用保険の適用要件を確認しておきたいと思いますが、雇用保険の被保険者となるためには次の2つの要件を満たす必要があります。

①1週間の所定労働時間が20時間以上であること

②31日以上引き続き雇用されることが見込まれること

労働者が複数の事業所に勤務している場合には、事業所ごとに上記の要件を満たしているのかどうかを確認し、仮に1つの事業所だけで要件を満たしているのであれば、その事業所で雇用保険の被保険者となり、複数の事業所で要件を満たしている場合には主たる賃金を受けている事業所で雇用保険の被保険者となります。

このため、例えば、本業先であるA社(1週間の所定労働時間:18時間)と副業先であるB社(1週間の所定労働時間:12時間)に勤務しているような労働者がいた場合、それぞれの1週間の所定労働時間を合計すれば30時間になりますが、A社とB社ごとでみれば要件を満たしていないため、どちらの会社でも雇用保険の被保険者になることはできない整理になっています。

上記の整理が、2022年1月1日からは65歳以上の兼業・副業者に限り、次のすべての要件を満たした場合には雇用保険の被保険者となります。

①1の事業主の適用事業において1週間の所定労働時間が20時間未満であること
②2以上の事業主の適用事業に雇用される65歳以上の者であること
③2の事業主の適用事業における1週間の所定労働時間(厚生労働省令で定める時間(5時間とされる予定)以上である場合に合算対象となる)の合計が20時間以上であること

つまり、2022年1月1日からは、65歳以上の兼業・副業者で、本業先の1週間の所定労働時間と副業先の1週間の所定労働時間の合計が20時間以上であり、かつ、その他の要件を満たせば、本業先と副業先の両方で雇用保険の被保険者となる(二重加入)ということです。

なお、この65歳以上の兼業・副業者の雇用保険の適用については、あくまで労働者からの申し出により手続きを行うことになっているため、要件を満たせば自動的に被保険者となるわけではありません。

また、事業主はこの申し出を不当に拒否したり、この申し出をしたことを理由にその労働者に対して解雇その他の不利益な取り扱いをしたりすることは禁止されていますので注意してください。

まだ、少し先の話ではありますが、いずれは65歳未満の労働者にも適用される可能性もありますので、今後の法改正の動きにも注目しておくようにしてください。