建設業の社会保険未加入問題について
建設業界では、以前から社会保険に未加入の企業が他の業界よりも多く存在し、労働者の医療や年金など、いざというときの公的保障が確保されないという問題が指摘されていました。 今回は、建設業の社会保険未加入問題について説明したいと思います。
建設業の社会保険未加入問題や技能者の処遇改善については、これまで、建設業団体と行政機関などが協議会を設置して、一体となってその対策を検討してきました。国として講じた対策には次のようなものがあります。
①直轄工事の予定価格への反映(平成24年4月)
・事業主負担分及び本人負担分について、必要な法定福利費を予定価格に反映
②経営事項審査における減点幅の拡大(平成24年7月)
・雇用保険、健康保険、厚生年金保険に未加入の場合の減点幅を拡大
③許可更新時等の確認・指導(平成24年11月)
・許可更新、経審、立入検査時に保険加入状況を確認・指導
・立入検査時には元請企業の下請企業への指導状況も確認
・指導に従わず未加入の企業は保険担当部局に通報
④下請指導ガイドラインの制定(平成24年11月)
・元請企業は、施工体制台帳・再下請通知書・作業員名簿等により下請企業や作業員の保険加入状況を確認・指導
・遅くとも平成29年度以降は、未加入企業を下請企業に選定しない、適切な保険に未加入の作業員は特段の理由が無い限り現場入場を認めないとの取扱いとすべき
⑤法定福利費を内訳明示した見積書の活用
・専門工事業団体毎に法定福利費を内訳明示した「標準見積書」を作成し、下請企業から元請企業への提出を開始(平成25年9月)
・建設業許可部局の立入検査による見積書の活用徹底(平成28年6月)
⑥国土交通省直轄工事における対策の実施(平成26年8月から段階的に実施)
・元請企業及び一次下請企業を社会保険加入企業に限定
・二次以下の下請企業についても未加入企業の通報・加入指導を実施
⑦地方公共団体発注の工事における対策の実施(平成28年6月)
・未加入業者の排除を図ることを入札契約適正化法に基づき要請
⑧相談体制の充実(平成28年7月)
・各都道府県単位での相談窓口の設置や個別相談会の開催等、全国社会保険労務士会連合会との連携を強化
このように、建設業において、本来、社会保険に加入すべき事業所が未加入のまま業務を行っていくことは現実的に難しくなっています。
未加入のままでいると、行政や元請業者から指導が入る、強制加入となって過去の保険料を徴収される、罰金を科されるなどの可能性があります。
また、建設業界でも現状においては社会保険の加入率が高まっているため、未加入の状態では新たな人材を獲得することも難しくなってきています。(ハローワークでは、社会保険に未加入である場合、原則として求人票を受け付けてもらえません。)
建設業に限った話ではありませんが、社会保険に未加入であるということは、事業を続けていくうえで様々なリスクを抱えることになりますのでご注意ください。