農業の労務管理サポート

2023年9月1日

農業・畜産・水産業の労務管理について

農業(畜産・水産含む)の労務管理は特殊です。労働基準法第41条に規定する労働時間・休憩・休日についての適用除外業種であるからです。天候や季節の繁閑がその理由です。注意しなければならないのは、労働時間・休憩・休日以外の労働基準法は、適用されます。

所定労働時間を設定する

労働時間の適用が除外されますので、1日8時間、1週40時間でなくてもOKです。ただ、企業の安全配慮義務は残りますので、むやみやたらな所定労働時間の設定は絶対にお勧めしません。特例の週44時間ぐらいを基準に考えられる方がいいと思います。
年間365日÷7日(1週)×44時間=2,294時間を基準に年間の労働時間を考えられるのはいかがでしょう。
しかし、技能実習生などは、他産業との均衡待遇の確保のために、1日8時間・1週40時間とされていますので、同一社内における、技能実習生と労働者との均衡待遇を確保するため、1日8時間・1週40時間とされる企業もあります(若い労働者の確保の面からも有効です)。

所定労働時間を超えて、勤務する場合は、残業代の支払いが必要です。ただし、割増する必要はなく残業時間に相当する通常の賃金の支払いがあればOKです。

外国人技能実習生について

農業に従事する外国人技能実習生については、他産業と同様に、割増賃金の支払いが必要になります。技能実習生に来られる方は、「働きたい、稼ぎたい」という希望もあり、その希望をかなえすぎてしまうと、休日がとれていなかったりして、安全配慮義務と競合してしまいますので、注意が必要です。
また、雇用管理を行うとともに、孤独にならないように、生活面での配慮も必要です。自治体によってはゴミの出し方や地域の人とのコミュニケーションまで深く指導していくことが求められることもあります。

農業の働き方改革「5日間年次有給休暇の強制付与」

働き方改革の「5日間年次有給休暇の強制付与」は、農業(外国人技能実習生を含む)にも適用されます。よく質問されるのは、「雨の日に年次有給休暇を付与してはいかがか?」というご質問です。本人の希望があれば、OKです。本人の希望がない場合に備えて雨の日の仕事を準備しておくことも必要になります。
また、閑散期に本人の希望を聴取などしたうえで、時期を指定して取得してもらうことも有効だと思います。

農業の労災保険

個人の農業は労災の適用除外業種です。法人の農業は労災の適用業種です。個人から法人なりした企業には、その辺の認識がなく手続きを怠ると、事故が起こってから、「労災保険未手続事業主に対する費用徴収制度」の適用を受けて、莫大な費用請求を受け、大変な思いをする企業もあります。注意が必要です。
農業はひとたび事故が起こると大きな事故につながることがあります。事業主の特別加入(特に法人)は絶対に必要です。

農業の安全衛生法

機械や有害性のある農薬の取り扱いを安全教育を事前に行うこと。カギなどの保管場所の管理。免許がないと扱えない機械があれば、一人でも多くの資格取得を促すこと。有資格者一覧表を作成しておくこと。危険な場所や作業手順がないようにしておくこと。など、様々な管理が必要になります。