従業員とのトラブルを解決するためのADRと労働審判とは?

2021年6月30日

解雇や雇い止め、労働条件の不利益変更などで従業員と会社との間でトラブルが発生すれば、該当従業員や事業主は都道府県労働局や労働基準監督署などに設置されている総合労働相談コーナーに相談することができ、都道府県労働局長から当事者間で解決を図るための指導・助言を受けることができます。

それでも問題が解決しなければ、裁判による解決を選択することもありですが、長い時間と多額の費用がかかる裁判ではなく、まずは、手続きが迅速かつ簡便で費用負担の少ない、ADR(裁判外紛争解決手続)と労働審判を活用することもできます。

今回は、この2つがどのようなものであるのかについて説明したいと思います。

ADR(裁判外紛争解決手続)とは?

ADRとは、Alternative(代替的な)、Dispute(紛争)、Resolution(解決)の頭文字をとった略語で、裁判によらない紛争解決手続きのことを言います。
このADRには、弁護士会や消費者団体、業界団体などが運営している民間型のものもありますが、労働問題については、都道府県労働局の紛争調整委員会などが行う行政型ものを活用することになります。

労働者または事業主がこの紛争調整委員会にあっせんを申請すると、労働問題の専門家である弁護士や大学教授、社会保険労務士などの第三者が当事者である労働者と事業主との間に入り、双方の状況を確認したうえで、両者が採るべき具体的なあっせん案を提示して円満な解決を図ります。

このADRのメリットとしては、非公開で行われるため企業にとってはイメージダウンを避けられますし、労働者にとってもプライバシーを保護できること、また、順調に交渉が進めば、1~3回程度の交渉でトラブルを解決でき、自力で交渉を行えば費用もかからないことなどが挙げられます。
ただし、交渉を有利に進めるためには弁護士やADRの代理業務ができる特定社会保険労務士を代理人にした方が無難ではあります。

労働審判とは?

労働審判とは、上記のADRと裁判の中間の制度といえるもので、管轄の地方裁判所で行われます。
労働者または事業主(一般的には労働者)が地方裁判所に労働審判の申し立てをすると、労働審判官(裁判官)1名と、労働者または使用者の立場で実際に労働紛争の処理に携わった経験などがある労働審判員2名で組織する労働審判委員会が事件を審理し、労働紛争の争点の整理や証拠調べなどを行ったうえで、適宜話し合いの解決(調停)を試み、まとまらなければ実情に応じた解決案を提示します。
この労働審判のメリットとしては、ADRと同様に非公開で行われること、また、原則3回以内の期日で迅速に審理され、裁判と比べれば費用は低額であることなどが挙げられます。

なお、手続きは上記のADRと同様、自力で行うことも不可能ではありませんが、ADRと比べると、より高度な法知識が必要になりますので、一般的には弁護士を代理人に立てて手続きを進めることになります。
以上、従業員とのトラブルを解決するための裁判以外の手続きについてご紹介しましたが、一般的にADRに申請、労働審判に申し立てをするのは従業員であり、会社としてはそれを通告される側になります。

会社としては、そもそも従業員に不信感を抱かせないよう、日頃から労働基準法ほかの法令に則った労務管理を行い、従業員と積極的にコミュニケーションをとっておくことが求められますし、ADRや労働審判になったときのことも想定して、労働条件などにかかわることについてはすべて書面で残しておくことなども重要になります。

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