令和3年分の年末調整の改正事項

2023年10月31日

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令和3年分の年末調整の改正事項

Q.今年、令和3年分の年末調整の改正事項を教えてください。

A. 年末調整については、毎年、税制改正により何かしらの変更がありますが、令和3年分の年末調整の改正事項としては主に次の2点が挙げられます。

令和3年分の年末調整の改正事項とは

令和3年分の年末調整の改正事項は、政府が進める「脱ハンコ」「手続きの電子化」を促進させるための改正であり、昨年のように各種控除額が変更になるような大きな変更はありません。実務的には昨年と変わるところはほぼないと言えます。

改正事項としては主に次の2点が挙げられます。

①税務関係書類の押印義務の見直し

国税関係書類については、全般的に押印義務の見直し(押印不要とする)が行われています

例えば、従業員から提出させる各種申告書などにおける従業員の押印が不要になりました。

②年末調整を電子化するための税務署への事前申請の廃止

従業員から提出させる各種申告書の内容を紙媒体ではなく電子データで提出させる場合、税務署への事前申請手続きが不要になりました。

令和3年度の税制改正においては、上記のほか、令和4年分の年末調整から対応することになる「住宅ローン控除の特例の見直し」、や、令和4年1月以降に支払う「退職所得課税の見直し」なども挙げられています。これらは、今回の年末調整には影響はありませんが、年末調整担当者としては十分に確認、理解しておくようにしてください。


さらに詳しく…

令和3年分の年末調整の改正事項
(令和4年分の年末調整から対応が必要なものを含む)

令和3年分の年末調整の改正事項の詳細と、現時点で令和4年分の年末調整から対応が必要とされている事項なども含めてまとめると次のとおりです。

①税務関係書類の押印義務の見直し

これまでは、「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」など、従業員から提出させる各種申告書には従業員の押印が必要であり、また、会社が税務署に提出する「給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表」についても会社の代表者の押印が必要でした(電子化している場合を除く)が、今回から押印は不要になりました。このため、各種申告書などにあった「㊞」の表示は削除されています。

②年末調整を電子化するための税務署への事前申請の廃止

これまでは、従業員から各種申告書などを電子データで提出させる場合には、事前に税務署に「源泉徴収に関する申告書に記載すべき事項の電磁的方法による提供の承認申請書」という書類を提出し、承認を得る必要がありましたが、今回からこの手続きが不要になりました。

③住宅ローン控除の特例の見直し
(令和4年分の年末調整から対応が必要)

住宅ローン控除については、令和元年10月の消費税率引き上げ(8%→10%)などの対策として、一定の要件を満たせば、特例措置により控除期間は本来の10年間から13年間に延長されることになっています。

この特例措置の適用要件は、入居期限が令和2年12月31日まで、また、対象住宅の床面積は「50㎡以上」などとされていましたが、法改正により、入居期限については2年間延長されて令和4年12月31日まで、また、対象住宅の床面積については、合計所得金額が1,000万円以下である者については「40㎡以上」となるなど要件が緩和されています。

なお、従業員がこの住宅ローン控除の適用を受けようとする場合には、初年度についてはその従業員自身が確定申告を行い、2年目以降から会社が年末調整で対応することになっています。このため、上記の要件緩和により新たに対象となる従業員が出たとしても、今回の年末調整で対応する必要はありません。

④退職所得課税の見直し
(令和4年から対応が必要)

退職金で課税対象となる額、つまり「課税退職所得金額」は、現状では原則として退職金額から勤続年数に応じて定められている「退職所得控除額」を控除した額の2分の1の額とされており、勤続年数が5年以下である役員に支払う退職金の場合には、上記の2分の1の計算は適用しないことになっています。

この整理が、令和4年4月1日以降に支払う退職金については、役員以外であっても勤続年数が5年以下であり、かつ、退職金額から「退職所得控除額」を控除した額が300万円を超える場合には上記の2分の1の計算を適用せず、一定の計算式により「課税退職所得金額」を計算することになります。

そもそも退職金については、年末調整の計算には算入しません(その支払いの際に退職金額に応じた所得税などの額を源泉徴収して手続きが終わる、もしくは、本人が確定申告をする)が、税務署に提出する「給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表」においては、退職金を支払った人数やその総額を記入しなければならず、加えて、役員に対して支払った退職金については、退職所得の源泉徴収票も提出しなければなりません。今回の年末調整では対応する必要はありませんが、年末調整担当者としては十分に理解しておく必要があります。

【参考】令和3年分の年末調整のしかたついて

令和3年分の年末調整のしかたについて、詳しくは国税庁のHPをご確認ください。

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