奨学金返還支援(代理返還)制度について
Q. 最近、学生時代に受けていた奨学金の返還ができなくなっている方が増えているようですが、そのような中で、企業が優秀な人材の獲得や離職率を低下させることなどを目的に、社員が返還すべき奨学金を代理で返還する制度を導入しているところもあるという話を聞きました。この制度について詳しく教えてください。
A. 奨学金には様々なものがありますが、日本学生支援機構(JASSO)の奨学金の返還を支援する制度に限って言えば、主に次の2つが挙げられます。
- 企業の奨学金返還支援(代理返還)制度
- 地方公共団体の奨学金返還支援制度
お問い合わせの制度は上記1になります。当然ながら、企業がこの制度を導入するかしないかは全くの任意であり、また、導入している企業でも、その企業によって返還を支援する要件(勤続3年以上の者を対象とするなど)や支援額(全額または一部とするなど)は異なります。(これは上記2にも言えることです。)
企業の奨学金返還支援(代理返還)制度について
運用方法について社内規程の整備が必要
この制度を導入するためには、まずは、上記で説明した対象とする者や支援額など、どのように運用していくのかについての社内規程を整備する必要があります。
そのうえで、返還を支援する者を決定し、日本学生支援機構にその者の返還支援を行うことについての申請を行い、代理返還をしていくことになります。
さらに詳しく…
奨学金返還支援(代理返還)制度を導入するメリット
企業がこの奨学金返還支援(代理返還)制度を導入するメリットとしては次のような事が挙げられます。
1.優秀な人材の獲得につながる可能性がある
採用活動において、就職後に奨学金を返還していかなければならない就活生に対して、会社の福利厚生の1つとしてアピールでき、優秀な人材の獲得につながる可能性がある。
2.法人税の減額につながる
代理で返還する額は、税務上、いわゆる損金(費用などが該当)に算入することができ、また、賃上げ促進税制(前年度より給与等の支給額を増加させた場合、その増加額の一部を法人税から税額控除できる制度)の対象となる給与等にも該当することから、法人税の減額につながる。
3.社会に貢献している企業であることを広くアピールできる
この制度を導入していることについて、希望すれば、日本学生支援機構のホームページに社名と制度の内容などを掲載してもらえるため、求人票や自社のホームページだけなく、社会に貢献している企業であることを広くアピールできる。
返還制度見直し(2021年4月から)
返還の流れ(見直し前)
この制度はこれまで企業が代理で返還する額を対象社員の給与や賞与などに上乗せし、それを受け取った対象社員が日本学生支援機構に返還するという流れになっていましたが、この方法では、税務上、返還額も含めて対象社員の所得として扱われるため、対象社員の所得税や住民税、社会保険料(社員と企業で折半)の増額につながるという問題がありました。
返還の流れ(見直し後)
日本学生支援機構は、2021年4月から、企業が直接、日本学生支援機構に返還できるように制度を見直し、返還対象者の所得とは切り分けて整理することで、返還対象者と制度導入企業の負担を減らすようにしています。この見直しをきっかけにこの制度を導入した企業も少なくありません。
企業の奨学金返還支援(代理返還)制度の詳細は、独立行政法人日本学生支援機構のホームページでご確認ください。
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