年次有給休暇の取得を促進するための取り組み

2023年10月31日

年次有給休暇 取得促進

Q. 従業員のモチベーションや生産性を向上させるため、年次有給休暇(以下、「有給休暇」)の取得を促進することを考えていますが、具体的にどのような取り組みを行うことが考えられますか?

A. 有給休暇の取得を促進するためには、次のような取り組みが考えられます。

  1. まずは取得しやすい風土をつくる。
  2. 従業員ごとの取得状況を把握し、年5日の取得義務に適切に対応する。
  3. 計画的付与制度(計画年休)を導入する。
  4. 時間単位・半日単位で取得できる制度を導入する。

中小企業では、現実的にはなかなか難しいところもあるかもしれませんが、自社に適した方法で対応を検討するようにしてください。


有給休暇の取得について

労働者が有給休暇を取得することは、労働基準法第39条で定められた労働者の当然の権利ですが、実態的に従業員が取得しづらい会社も多くあることと思います。そもそも、有給休暇の取得率が低いのは、同僚に迷惑がかかることや上司からの評価が下がることなどを懸念して取得することにためらいを感じる従業員が多いということが考えられます。

企業として有給休暇の取得を促進していくことは、今後、少子高齢化が進む中で優秀な人材の獲得するためにも必要なことです。従業員のモチベーションや生産性の向上、離職率の低下にもつながります。

上記で挙げた各種の取り組みについて詳しくは次のとおりです。

まずは取得しやすい風土をつくる。

従業員が気兼ねなく有給休暇を取得できるような風土づくりが必要です。経営幹部が会社として有給休暇の取得を促進することをアナウンスし、各部署の責任者は率先して有給休暇を取得するとともに部下にも取得を促すことが重要です。 また、従業員一人ひとりの業務内容や量を確認して、その従業員にしかできない業務をなくし、誰が有休休暇を取得しても代わりの者で対応できるように業務を共有、平準化すれば、より一層、有給休暇を取得しやすくなります。

従業員ごとの取得状況を把握し、年5日の取得義務に適切に対応する。

2019年4月の改正労働基準法で規定された年5日の有給休暇の取得義務に対応するためにも、労務管理システムなどで従業員ごとの有給休暇の取得状況を確認できるようにしておかなければなりません。 そのうえで、年度途中のどこかのタイミングで各従業員の取得状況を確認し、まったく取得していない、あるいは、取得日数が5日未満である従業員については、その従業員の意見を聴いたうえで時季を指定して取得させます。

計画的付与制度(計画年休)を導入する。

計画的付与制度、いわゆる「計画年休」とは、労働基準法第39条第6項で定められている制度で、労使協定を締結することで、付与日数から5日を除いた日数分については、会社側で時季を指定して計画的に有給休暇を取得させることができるようになります。(就業規則にも規定が必要)

例えば、夏季休暇や年末休暇の前後にこの計画年休を組み合わせて大型連休になるようにしたり、従業員本人や家族の誕生日、結婚記念日などを「アニバーサリー休暇」としたりなど、計画的に有給休暇を取得させることが考えられます。 この計画年休は、原則として会社側が取得時季を指定するものであるため、従業員は気をつかうことなく取得でき、かつ、取得率を向上させることができます。

時間単位・半日単位で取得できる制度を導入する。

有給休暇とは、本来1日単位で取得させることが原則ですが、労働基準法第39条第4項では、労使協定があれば、年間5日に相当する時間数までであることを条件として、時間単位で取得させることも可能とされています。

また、労働基準法に定めはありませんが、厚生労働省の通達(平成21年5月29日・基発第0529001号)によると、半日単位で取得させることも可能とされています。

ともに就業規則に規定を設けることが必要で、労務管理も複雑にはなりますが、有給休暇を時間単位や半日単位で取得できるようにすることで、数時間程度、あるいは、半日だけの用事がある従業員にとっては気軽に取得できるようになりますので、取得率の向上が期待できます。

企業として有給休暇の取得を促進していくことは、今後、少子高齢化が進む中で優秀な人材の獲得するためにも必要なことですし、従業員のモチベーションや生産性の向上、離職率の低下にもつながります。 中小企業では、現実的にはなかなか難しいところもあるかもしれませんが、自社に適した方法で対応を検討するようにしてください。

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