労働条件を引き下げる場合の手続きと注意点

2021年6月30日

労働条件引き下げの手続きと注意点
労働条件引き下げの手続きと注意点

労働条件の見直しは、労務管理において大切な項目の一つです。現在のコロナ禍でもそうですが、企業には経営状況の悪化やその他の事情から、従業員の賃金引き下げなどを検討しなければならない場合があります。
しかしながら、従業員にとって労働条件を不利益に変更することは、法的に限定された場合にしか認められておらず、安易に実行すると大きなトラブルにつながることになります。

今回は、労働条件を引き下げる(これを一般的に「労働条件の不利益変更」といいます)場合の手続きと注意点について解説します。
労働条件の不利益変更とは、例えば、基本給や賞与、退職金の引き上げ、諸手当の引き下げあるいは廃止、労働時間の延長、休日の減少、休憩時間の短縮など、文字どおり従業員にとって不利益となる変更のことをいいます。

この労働条件の不利益変更を行うためには、次のいずれかの手続きが必要になります。

①全従業員の同意を得る

労働契約法第9条では、「使用者は、労働者と合意することなく、就業規則を変更することにより、労働者の不利益に労働契約の内容である労働条件を変更することはできない。」とされているため、労働条件の不利益変更を行う場合には、原則として全従業員から個別に同意を得なければなりません。

②労働協約を変更する

労働組合がある場合には、その労働組合と交渉して、従来の労働条件を変更することについての労働協約を締結すれば、その内容が著しく不合理なものでない限り、変更後の労働条件を組合員に適用することができます。つまり、全従業員から個別に同意を得る必要はないということです。

ただし、労働協約の効力が及ぶのは、原則として組合員に限定されているため、非組合員には個別に同意を得なければなりません。(例外として、事業場の4分の3以上が組合員であれば、労働協約は非組合員にも効力が及びます。)

③就業規則を変更する

上記①で説明したとおり、就業規則を変更することによって労働条件の不利益変更を行う場合でも、原則としては従業員の同意を得なければなりません。

ただし、労働契約法第10条では、労働条件の不利益変更について従業員の同意を得られなくても、変更後の就業規則を従業員に周知し、かつ、就業規則の変更が次の点などを総合的に勘案して、合理的なものと認められる場合には、変更後の就業規則を従業員に適用できるとされています。

・従業員の受ける不利益の程度
・労働条件の変更の必要性
・変更後の就業規則の内容の相当性
・労働組合等との交渉の状況
・その他の就業規則の変更に係る事情

なお、労働組合がある場合で、変更しようとしている就業規則の内容が労働協約に反する場合には、労働協約の有効期間の満了を待って(有効期間がない場合には解約が必要)、就業規則を変更することになります。これを考えると、実質的には上記②の交渉を進めた方がよいと言えます。

上記のとおり、労働条件の不利益変更を行おうと思えば、最終的には全従業員の同意を得ることなく、就業規則を変更することで実行することはできますが、従業員とトラブルになって裁判になれば、その変更に合理性がないとして無効とされることもあります。

まずは、従業員に経営状況が悪化していることなど、労働条件を引き下げざるを得ない状況であることについて丁寧に説明し、同意を得るところから始めるべきといえます。

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