労使協定とは?その効力と種類について

2023年10月31日

労使協定 その効力と種類について

Q. 36(サブロク)協定などの労使協定にはそもそもどのような効力があるのでしょうか? また、36協定のほかに会社として締結すべき労使協定にはどのようなものがあるのか教えてください。

A. 労使協定の中で最も有名なものは、恐らく36協定(正しくは、「時間外労働・休日労働に関する労使協定」)です。また、労働基準法などで規定されている36協定以外の労使協定としては、変形労働時間制を導入する際に締結が義務とされているものなどが挙げられます。労働基準監督署に届け出が必要なものと届け出が不要なものがありますので注意してください。

36協定(正しくは「時間外労働・休日労働に関する労使協定」)について

労働基準法に定められた労働時間と休日

労働時間の上限と休日について

労働基準法第32条では、使用者は労働者に1日8時間、1週40時間を超えて労働させてはいけないこと、また、同法第35条では、使用者は労働者に対して、毎週少くとも1回の休日あるいは4週間を通じて4日以上の休日を与えなければならないとされています。

労働基準法第36条

法定労働時間を超える労働や休日労働について

労働基準法第36条では、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合にはその労働組合、労働組合がなければ労働者の過半数を代表する者との書面による協定を締結し、労働基準監督署に届け出ることで、労働者に上記の法定労働時間を超える労働や休日労働をさせることができるとされています。

「36協定」と呼ばれているのは、その根拠規定が労働基準法第36条であるからです。

法定労働時間を超える残業や休日出勤をさせた場合の罰則について

36協定の締結と労働基準監督署への届け出が必要です。

この36協定を締結せず、あるいは、36協定を締結していても労働基準監督署に届け出ることなく従業員に上記の法定労働時間を超える残業や休日出勤をさせれば、労働基準法違反となり、「6か月以下の懲役または30万円以下の罰金」に処されることになっていますので注意が必要です。

※一般的に、この罰則が適用される前には労働基準監督署から是正勧告などが行われますので、すぐにその指示に従えば、罰則が適用されることは少ないと言えます。

36協定と就業規則

36協定を締結しただけでは、残業や休日出勤を命じることはできません

少し専門的な話になりますが、36協定を含めその他の労使協定は、上記で説明した労働基準法などに規定されている罰則の適用を受けないという「免罰的効力」があるに過ぎません。

つまり、36協定を締結し、労働基準監督署に届け出を行っただけでは従業員に残業や休日出勤を命じることができるわけではないということです。

実際に従業員に対して残業や休日出勤を命じるためには、会社のルールブックである就業規則や雇用契約書に残業や休日出勤を命じることがあることを明記しておく必要がありますので、その点は理解しておく必要があります。


さらに詳しく…

労働基準法などで締結が義務とされている労使協定について

労働基準法などで締結が義務とされている労使協定には様々なものがありますが、労働基準監督署に届け出が必要なものと届け出が不要なものがあります。この2種類に分けると、主に次のような労使協定があります。

届け出の義務がある労使協定

労使協定の名称根拠法・条文
労働者の貯蓄金の管理に関する労使協定労働基準法第18条第2項
1か月単位の変形労働時間制に関する労使協定 ※1労働基準法第32条の2第1項
1年単位の変形労働時間制に関する労使協定労働基準法第32条の4第1項
1週間単位の非定型的変形労働時間制に関する労使協定労働基準法第32条の5第1項
時間外労働・休日労働に関する労使協定(36協定)労働基準法第36条第1項
事業所外労働のみなし労働時間制に関する労使協定 ※2労働基準法第38条の2第2項
専門業務型裁量労働制に関する労使協定労働基準法第38条の3第1項

※1 この労働時間制については、就業規則で詳細に定めれば、労使協定の締結、届け出は不要です。
※2 労働したとみなす「みなし労働時間」を法定労働時間内とする場合には、労使協定の締結、届け出は不要です。

届け出の義務がない労使協定

労使協定の名称根拠法・条文
賃金から法定控除以外のものを控除する場合の労使協定労働基準法第24条第1項
フレックスタイム制に関する労使協定
(清算期間が1か月を超えない場合)
労働基準法第32条の3第1項
休憩の一斉付与の例外に関する労使協定労働基準法第34条第1項
年次有給休暇の時間単位での付与に関する労使協定労働基準法第39条第4項
年次有給休暇の計画的付与に関する労使協定労働基準法第39条第6項
年次有給休暇の賃金を標準報酬日額で支払う場合の労使協定労働基準法第37条第3項
月60時間を超える部分の時間外労働に対して
50%以上の割増賃金を支払う代わりに
有給の休暇を与える代替休暇制度に関する労使協定
労働基準法第37条第3項
育児休業制度の適用除外者に関する労使協定育児・介護休業法第6条第1項
子の看護休暇制度の適用除外者に関する労使協定育児・介護休業法第16条の3第2項
介護休業制度の適用除外者に関する労使協定育児・介護休業法第12条第2項

上記のとおり、労使協定には様々なものがありますが、締結した場合には、基本的には就業規則にもその旨の規定を設けて従業員に周知しなければなりません。 また、労使協定の届け出が必要であるかどうかにかかわらず、就業規則を変更した場合には、その就業規則を労働基準監督署に届け出なければなりませんので注意してください。

就業規則の改訂は、労務管理に詳しい鹿児島県の社会保険労務士に相談する!

当事務所では、労務相談及び就業規程の改訂のお手伝いをしています。

「就業規則」改訂、その他労務相談に関するお問い合わせはこちら↓