無断欠勤を続け、音信不通になっている従業員の対応方法

2023年10月31日

無断欠勤を続け、音信不通になっている従業員の対応方法

Q. 弊社のある従業員が突然出勤してこなくなり、連絡も取れなくなったため、この従業員を就業規則の規定に基づいて自然退職あるいは懲戒解雇にしようと考えています。この手続きを適正に行うためにはどのような点に気を付ければよいでしょうか?

A. 多くの会社では、就業規則に「〇日以上無断欠勤が続いた場合」には自然退職とする規定や、「正当な理由のない無断欠勤が〇日以上に及び、出勤の督促に応じなかったとき」には懲戒解雇とする規定を設けていることと思います。

御社が自然退職か懲戒解雇のどちらにするのか検討されているということは、就業規則には上記のどちらの規定も設けているものと推察しますが、自然退職の規定があるのであれば、懲戒解雇ではなく自然退職にすべきです。その理由についてはこのあと詳しく説明しますが、ざっくりと言えば、懲戒解雇とするためにはかなりの手間と時間がかかるからです。

就業規則における自然退職と懲戒解雇の規定について

就業規則に「〇日以上無断欠勤が続いた場合」には自然退職とする規定や、「正当な理由のない無断欠勤が〇日以上に及び、出勤の督促に応じなかったとき」には懲戒解雇とする規定について、「〇日以上」の部分については会社によって異なると思います。

厚生労働省の通達にある事例から

就業規則に規定する日数は何日が妥当か?

厚生労働省の通達では、完全に従業員に非がある解雇と認められるケースとして、「2週間以上正当な理由なく無断欠勤し、出勤の督促に応じない場合」という事例が挙げられていますので、就業規則では、自然退職も含めてこの「2週間以上」の日数、つまり、「14日以上」から「30日以上」くらいで規定しておくべきです。

自然退職や懲戒解雇を回避するために手を尽くしましたか

就業規則の規定に該当した⇒自然退職や懲戒解雇にすべきではない理由

ここで注意しておきたいのは、自然退職とする場合であっても懲戒解雇とする場合であっても、該当従業員にとっては会社を辞めさせられる処分であることに違いはなく、その後の生活に大きな支障が生じることになります。

このため、会社としては、就業規則の規定に該当したからと言って、直ちに自然退職や懲戒解雇にすべきではなく、自然退職や懲戒解雇を回避するためにあらゆる手を尽くすことが求められます。

無断欠勤を続け音信不通になっている理由は何ですか

連絡が取れなくなった理由、原因を確かめましょう

該当従業員が無断欠勤を続け、音信不通になっている理由が、単に辞めたいからではなく、何かしらの事件に巻き込まれている、あるいは、携わっていた業務のストレスなどによってうつ病になっている、また、死亡しているなどの可能性もあるからです。

自然退職は最終的な手段

まず行うべきは連絡をし続けること

従業員の安全配慮義務がある会社として、まず行うべきは、現段階では該当従業員と連絡が取れないとしても、一定期間は該当従業員に電話やメールなどで連絡をし続けること、また、家族にも連絡したり、自宅を訪問したりするなど、可能な限り、連絡が取れない理由を調査することが求められます。それでも連絡が取れない場合に、最終的な手段として自然退職とする旨の通知を配達証明付きの内容証明郵便などで送付するのが一般的な流れであると言えるでしょう。


さらに詳しく…

懲戒解雇ではなく自然退職にすべきとした理由について

従業員を解雇するためには、労働基準法第20条における解雇予告の通知が必要となりますが「解雇予告通知書」にて解雇予告を通知する際、そもそも連絡が付かない従業員にどのように通知するのかという問題が出てきます。

解雇予告の通知について

解雇の場合は「解雇予告通知書」にて本人に通知します

従業員を解雇するためには、労働基準法第20条において、原則として30日前までに解雇の予告をしなければならないことになっています。(この30日という期間は、平均賃金である「解雇予告手当」を支払うことによって短縮することも可能です。)これらを書面によって通知しますが、本人が受け取らなかった場合、解雇の予告をしたことにはならなくなります。

内容証明郵便などでの送付は可能か

例えば、「解雇予告通知書」を手渡しで届けてくれる、配達証明付きの内容証明郵便などで送付することが考えられます。

しかし、配達証明付きの内容証明郵便でも、該当従業員が自宅にいない場合、また、自宅にいても居留守を決め込まれると、「解雇予告通知書」は受け取られず、郵便局での保管期限である1週間が経過すれば会社に返送されることになります。その結果、解雇の予告をしたことにはならなくなります。

公示送達を行う場合

「公示送達」とは、どこにいるのかわからない者にある意思表示を伝えたい場合に、その者の住所地を管轄する簡易裁判所に申し立てを行って、伝えたい内容を裁判所の掲示場に掲示、また、官報や新聞に少なくとも1回掲載してもらい、2週間が経過するとその者に意思表示が到達したとみなされる制度です。

ただし、この公示送達を行うためにはかなり面倒な手続きが必要になります。

自然退職とする場合

解雇の場合との違い

自然退職とする場合にもその通知書を配達証明付きの内容証明郵便などで送付しておいた方が良いと言えます。解雇の場合との違いは、必ずしも本人に通知する必要はないということです。

仮にその通知書が返送されてきたとしても法的には問題ありません。(後々のトラブルも想定し、送付したという記録は残しておきましょう。)

自然退職とする場合の一般的な流れ

トラブルを防止するための手順

  1. 定期的に電話やメールで連絡を取り続ける。
  2. 緊急連絡先となっている家族にも連絡してみる。
  3. 自宅を訪問する。
  4. 自然退職とする旨の通知(「就業規則第〇条の規定により、〇年〇月〇日をもって退職とする。」などと記載)を配達証明付きの内容証明郵便などで送付する。

※なお、懲戒解雇とする場合にも基本的には上記と同様の手順を踏まなければなりません。
※4の部分について、出勤の督促状や解雇予告通知書を送付、また、場合によっては「公示送達」を行うことになります。

トラブル防止のための注意事項

自然退職と懲戒解雇のどちらの手続きを行う場合でも、実際に手続きを行ったあとで、これまで連絡が取れなかった該当従業員から不当な手続きであると主張されるなど、トラブルになるケースは少なくありません。

このため、会社としては上記の手順を踏んだうえでの最終的な判断としての自然退職あるいは懲戒解雇であることを証明できるようにしておく必要があります。

いつ本人や家族に連絡したのか、また、いつ文書を送付したのかなどについては、その記録を詳細に残しておくようにしてください。

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