労働審判制度について

2023年10月31日

裁判所、あっせんと労働審判についてのイメージ
あっせんと労働審判について

Q. 労働条件などについて従業員との間でトラブルが発生すると、その従業員と労働審判や裁判で争うことになる場合もあると思いますが、この労働審判の概要や裁判との違いなどについて教えてください。

A. 残業代の支払いや解雇などについて従業員との間でトラブルが発生すれば、会社側としてはまずはその従業員との話し合いで解決を試みると思います。しかし、それで解決できなければ、各都道府県労働局に設置されている紛争調整委員会によるあっせんや、労働審判、裁判で争うことになる場合があります。(これらは従業員側、会社側のどちらからも申請、申し立て、提起ができます。)

トラブルの解決方法について

紛争調整委員会によるあっせん

会社側と従業員との話し合いで解決を試みるが、双方の話し合いで解決できなければ都道府県労働局や労働基準監督署に相談すると、まずは都道府県労働局の助言・指導や紛争調整委員会によるあっせんの手続きを案内されることが一般的です。(はじめから労働審判の申し立てを行うこともできます。)

労働審判について

労働審判は、平成18年4月1日から始まった比較的新しい制度ですが、原則として3回以内の話し合いで終了(概ね3か月前後で終了)することになっているため、裁判よりも短期間での解決を目指すことができます。

解決しない場合は…

手続きの順番としては、都道府県労働局の助言・指導→紛争調整委員会によるあっせんを経て、(それでも解決しなければ)労働審判→裁判と段階的に移行していくことが多いと言えます。


さらに詳しく…

各トラブル解決方法の違い

紛争調整委員会によるあっせん、労働審判、裁判の違いを簡単にまとめると次のようになります。

①紛争調整委員会によるあっせん

実施機関都道府県労働局の紛争調整委員会
目指す解決方法話し合いによる合意
相手方の手続き参加任意(不参加の場合はその時点で手続き終了)
合意内容の効力民事上の和解契約と同様
(相手方が履行しない場合でも強制執行は不可)
費用無料
公開・非公開非公開
弁護士の選任選任しないことが多い。
申請に必要な書類申請書、証拠書類など
処理期間概ね2か月前後
(原則1回の話し合いを実施)

労働審判

実施機関裁判所の労働審判委員会
目指す解決方法話し合いによる合意
(調停が決裂した場合には労働審判委員会の審判)
相手方の手続き参加正当な理由なく出頭しない場合には過料を科される。
合意内容の効力裁判上の判決や和解と同様
(相手方が履行しない場合には強制執行も可)
費用有料
公開・非公開非公開
弁護士の選任選任することが一般的
申し立てに必要な書類申立書、証拠書類など
処理期間概ね3か月前後
(原則3回以内の話し合いを実施)

③裁判(民事訴訟)

実施機関裁判所
目指す解決方法判決
(話し合いによる解決も可)
相手方の手続き参加主張書面を提出せずに出頭しない場合には、原告側の主張を認めたものとみなされる可能性あり。
判決の効力当事者が不服を申し立てなければ、その内容が確定し、判決の内容を争うことができなくなる。(強制執行可)
費用有料
公開・非公開公開
弁護士の選任選任することが一般的
訴訟の提起に必要な書類訴状、証拠書類など
処理期間概ね1年から1年6か月前後

各トラブル解決方法の流れ

紛争調整委員会によるあっせんと手続きの終了

もっとも迅速にトラブルを解決できる可能性があるのは、紛争調整委員会によるあっせんですが、あっせんに持ち込まれた会社側あるいは労働者側はあっせんに応じる義務はありません。このため、あっせんに持ち込まれた側があっせんに参加する意思がない旨を表明すれば、そこで手続きは終了することになります。

紛争調整委員会によるあっせんから労働審判へ

一方、労働審判では、申し立てをされた側には原則として応じる義務があり、また、解決までにかかる時間は裁判よりもかなり短くなります。また、裁判の場合には、いわゆる白か黒かの判決が下されることになりますが、労働審判では、トラブル解決のために柔軟な解決方法を模索することができます。

労働審判から裁判への移行

なお、労働審判においてその審判に相手方から異議申立てがあった場合には、裁判に移行することになるため、この点(労働審判をした時間が無駄になる)がデメリットとして挙げられることがありますが、労働審判の結果は裁判に引き継がれますので、一般的に労働審判に要した時間分、裁判にかかる時間は短縮されます。また、労働審判での解決率は7割~8割と言われていますので、これらを踏まえると、裁判の前に労働審判で早期解決を目指すことにほぼデメリットはないと言えます。

従業員側、会社側のどちらが労働審判の申し立てや訴訟を提起するにしても、円滑に手続きを進めるために労働問題に詳しい弁護士に手続きを依頼することをお勧めします。

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