【中小企業】月60時間を超える時間外労働の割増賃金率の引き上げについて

2023年10月31日

コラムイメージ_001

Q. 大企業では既に適用されているルールだと思いますが、令和5年4月1日からは、中小企業でも月60時間を超える残業については、50%以上の割増賃金を支払わなければならないと聞いています。あらためてこのルールの詳細について教えてください。

A. 時間外労働(残業)の割増賃金率は、原則としては該当従業員の時間単価の25%以上ですが、令和5年4月1日からは、中小企業にも、月60時間を超える時間外労働の割増賃金率については、50%以上とされるルールが適用されます。

現状では、企業規模を問わず、月60時間を超える時間外労働があるところはそれほど多くないかもしれませんが、時間外労働はほぼないという会社でも最低限、就業規則を変更しておくなどの対応は必要になりますのでご注意ください。

月60時間を超える時間外労働の割増率引き上げについて

令和5年4月1日からは中小企業にも適用

平成22年4月1日に改正施行された労働基準法では、月60時間を超える時間外労働の割増賃金率については、50%以上とされました。

平成22年4月1日時点では、このルールの中小企業への適用は当面猶予することとされていたため、長らく大企業だけに適用されてきました。

その後、平成30年6月29日に成立した働き方改革関連法において、令和5年4月1日からは中小企業にも適用することとされ、その期日がいよいよ近づいてきたという流れになります。


さらに詳しく…

月60時間を超える時間外労働の割増率引き上げ 注意点

月60時間を超える時間外労働の割増賃金率については50%以上としなければならないというルールにおける、中小企業の定義や深夜労働、休日労働との関係、また、その他の注意点などについてまとめると次のとおりになります。

中小企業の定義

業種別に以下に該当すれば中小企業とされます。
なお、この中小企業であるのかどうかについては、本店や支店、営業所、また、工場などのいわゆる「事業場」単位ではなく、企業単位で判断されます。

中小企業に該当するかは、①または②を満たすかどうかで企業単位で判断されます。

業種①資本金の額または
出資の総額
②常時使用する
労働者数
小売業5,000万円以下50人以下
サービス業5,000万円以下100人以下
卸売業1億円以下100人以下
その他
(製造業、建設業、運輸業等)
3億円以下300人以下

深夜労働・休日労働との関係

[深夜労働との関係]

月60時間を超える時間外労働が深夜労働(22:00から5:00までの労働)である場合には、その割増賃金率は、時間外労働の割増賃金率50%+深夜労働の割増賃金率25%=75%になります。

[休日労働との関係]

そもそも休日労働とは、就業規則で定める、原則として週1日の法定休日(日曜日としている会社が多い)における労働のことを言いますが、この休日労働と時間外労働とは区別して考えることになっているため、月60時間の時間外労働の算定には含みません。

ただし、法定休日ではなく所定休日(土曜日としている会社が多い)の労働については、原則として(※)月60時間の時間外労働の算定に含みます。 ※少しややこしい話になりますが、日曜日を法定休日、土曜日を所定休日、1日の所定労働時間を8時間未満としている会社で、月曜日から金曜日まで時間外労働がない者が、土曜日に仕事をした場合、その時間すべてが時間外労働にならないこともあります。(週の法定労働時間が40時間であるため)

代替休暇制度

月60時間を超える時間外労働があった者に対して、割増賃金率の引上げ分(25%)に相当する時間数の代替休暇(有給)を付与すれば、+25%分の割増賃金は支払わなくてよいことになっています。

就業規則の変更

時間外労働や休日労働、深夜労働の割増賃金率は、労働基準法上、就業規則に必ず記載しておかなければならない事項とされています。 このため、就業規則には、上記の労働があった場合の割増賃金率やその計算方法などを記載しているかと思いますが、新たに、月60時間を超える時間外労働については50%の割増賃金を支払うこと、また、上記③の代替休暇制度を導入するのであれば、そちらも就業規則に規定しておく必要があります。

※参考 鹿児島労働局 (【中小企業の皆様へ】2023年4月1日から月60時間を超える時間外労働の割増率が5割に引き上げられます)

労務相談、就業規則の改訂等…のご相談はこちら 
鹿児島の特定社会保険労務士に相談する!

補助金・助成金活用、労務相談、就業規則の改訂などお気軽にご相談ください。

各種ご相談、お問い合わせはこちら↓