職場における労働衛生基準の見直しについて
Q. 令和3年12月から、作業場の照度など職場における労働衛生基準が見直されたと聞きました。具体的にどのように見直されたのか教えてください。
A. 令和3年12月1日に「事務所衛生基準規則及び労働安全衛生規則の一部を改正する省令」が公布され、職場における労働衛生基準が見直されました。
主な見直しのポイントは次の3点になりますが、「3.作業場の照度」以外は上記の省令の公布と同時に施行されていますのでご注意ください。
労働衛生基準の見直しのポイント
令和3年12月1日に「事務所衛生基準規則及び労働安全衛生規則の一部を改正する省令」にて見直された、職場における労働衛生基準の 主なポイントは次の3点になります。
1.トイレの設置(令和3年12月1日施行)
原則として改正前の規定を踏襲しつつ…
変更前⇒男性用と女性用とで区別して設置すること。また、同時に就業する男性労働者および女性労働者の人数に応じて設置数が定められていました。
変更後⇒同時に就業する労働者が常時10人以内である場合には、一定のプライバシーの確保ができていれば、男性用と女性用の区別がない男女共用トイレ(独立個室型のトイレ)を設置することで足りる。
2.作業場に備えるべき救急用具(令和3年12月1日施行)
救急用具設置の規定は削除
作業場に備えるべき救急用具については、これまで、具体的な品目(ほう帯や消毒薬など)が定められていましたが、この規定は削除されました。
3.作業場の照度(令和4年12月1日施行)
作業区分が変更
変更前⇒「精密な作業」、「普通の作業」、「粗な作業」の3つの作業区分ごとに定められていました。
変更後⇒「一般的な事務作業」と「付随的な事務作業」(資料の袋詰めやクリップ留めなどの文字を読み込む必要のない作業)の2つの作業区分に変更
- 「一般的な事務作業」を行う作業場→300ルクス以上
- 「付随的な事務作業」を行う作業場→150ルクス以上
さらに詳しく…
「事務所衛生基準規則」及び「労働安全衛生規則」改正のポイントとは
1.トイレの設置(事務所衛生基準規則第17条、労働安全衛生規則第628条)
改正前
- 男性用と女性用に区別すること
- 男性用大便所の便房の数は、同時に就業する男性労働者60人以内ごとに1個以上とすること
- 男性用小便所の箇所数は、同時に就業する男性労働者30人以内ごとに1個以上とすること
- 女性用便所の便房の数は、同時に就業する女性労働者20人以内ごとに1個以上とすること など
改正後
原則として改正前の規定を踏襲しつつ
同時に就業する労働者が常時10人以内である場合には、四方が壁で囲まれており、施錠ができるなどのプライバシーの確保ができていれば、男性用と女性用の区別がない男女共用トイレ(独立個室型のトイレ)を設置することで足りる。
2.作業場に備えるべき救急用具(労働安全衛生規則第634条)
改正前
- ほう帯材料、ピンセツト及び消毒薬
- 高熱物体を取り扱う作業場その他火傷のおそれのある作業場については、火傷薬
- 重傷者を生ずるおそれのある作業場については、止血帯、副木、担架等
改正後
上記の規定は削除
※削除された理由は、労働者が負傷あるいは病気になった場合には、その場で応急手当を行うことよりも速やかに医療機関に搬送することが基本であること、また、事業場ごとに負傷や疾病の発生状況が異なるためとされています。
3.作業場の照度(事務所衛生基準規則第10条)
改正前
- 「精密な作業」(例:製図作業など文字を継続して見る作業)を行う作業場→300ルクス以上
- 「普通の作業」(例:一般的な事務作業)を行う作業場→150ルクス以上
- 「粗な作業」(例:来客受付、資料の編纂)を行う作業場→70ルクス以上
改正後
- 「一般的な事務作業」を行う作業場→300ルクス以上
- 「付随的な事務作業」を行う作業場→150ルクス以上
※「一般的な事務作業」とは、改正前の「精密な作業」と「普通の作業」に該当し、「付随的な事務作業」とは、改正前の「粗な作業」に該当するとされています。
4.その他
主な見直しポイントとして、「作業場の照度」、「トイレの設置」、「作業場に備えるべき救急用具」について説明しましたが、そのほか(更衣設備や休憩の設備など)にも考え方が見直されているところがあります。
【参考】厚生労働省のホームページでご確認ください
詳細については下記の厚生労働省のホームページ「事務所における労働衛生対策」でご確認ください。
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