労災保険の休業(補償)給付と健康保険の傷病手当金との違い

2023年10月31日

休業補償の画像

Q. 従業員がけがや病気のために休業すると、その状況により、労災保険の休業(補償)給付または健康保険の傷病手当金が支給されると思うのですが、この2つは具体的にどう違うのでしょうか?

A. 労災保険の休業補償給付と健康保険の傷病手当金は両者ともに、労働者がけがや病気のために休業する場合に支給されるものですが、決定的な違いは、休業する原因となるけがや病気が業務災害・通勤災害であるのか、または、プライベートのものであるのかということになります。

労働者災害補償保険の休業補償給付と健康保険の傷病手当金について

労働者災害補償保険の休業補償給付とは

労働者災害補償保険(以下「労災保険」)の休業(補償)給付とは、労働者が業務災害(業務が原因で被ったけがや病気など)または通勤災害(通勤中に被ったけがや病気など)によって休業する場合に該当労働者に支給される給付金の事を言います。なお、業務災害による休業については「休業補償給付」として、通勤災害による休業については「休業給付」として支給されます

「休業補償給付」と「休業給付」について

業務災害による休業については「休業補償給付」として、通勤災害による休業については「休業給付」として支給されます。名称の違いは、労働基準法で使用者に求められている労働者の災害補償が業務災害に限られているからです。(つまり、労働基準法上は通勤災害まで補償する必要はない。)

ただし、実務上、労働基準法上の災害補償については、労働者災害補償保険法(以下「労災保険法」)に則って対応することになりますので、使用者は業務災害に加えて通勤災害についても手続きを行う責任があります。

健康保険の傷病手当金とは

健康保険の傷病手当金とは、健康保険の被保険者が上記の業務災害と通勤災害以外のけがや病気で休業する場合に該当被保険者に支給される手当金のことを言います。


労働者災害補償保険の休業補償給付と健康保険の傷病手当金の支給要件・支給額・支給期間について

労働者災害補償保険の休業補償給付と健康保険の傷病手当金の支給要件・支給額・支給期間は次のとおりです。

労働者災害補償保険と健康保険

支給要件業務上の事由または通勤によるけがや病気の療養のための休業であること。 上記のけがや病気のために仕事に就くことができないこと。 通算して(連続している必要はない)3日間の休業日(待期期間)があること。 休業4日目以降について賃金の支払いがないこと。業務外の事由によるけがや病気の療養のための休業であること。 上記のけがや病気のために仕事に就くことができないこと。 連続して3日間の休業日(待期期間)があること。 休業4日目以降について賃金の支払いがないこと。
支給額1日あたりの支給額
(給付基礎日額の80%) 給付基礎日額(原則として労働基準法上の平均賃金に相当する額)の60% + 休業特別支給金として給付基礎日額の20%
1日あたりの支給額 支給開始日以前12か月間の各月の標準報酬月額(被保険者の報酬月額を標準報酬月額表にあてはめて決定される額)を平均した額÷30日×2/3です。
支給期間休業4日目から、上記の支給要件を満たす限り支給されます。休業4日目から、最長1年6か月まで支給されます。
その他支給開始から1年6か月が経過したときに、そのけがや病気が治っておらず、労災保険上の傷病等級に該当する程度の障害がある場合には、傷病(補償)年金に切り替わります。今年の6月に健康保険法が改正され、来年2022年1月1日からは、傷病手当金の支給を受けている期間のみを通算して「1年6か月」とする取り扱いに変わる。 共済組合では既にこの整理で運用しています。

その他注意事項

・過去に労災保険から休業(補償)給付を受けていて、休業(補償)給付と同一のけがや病気のために労務不能となった場合には傷病手当金は支給されません。

・業務外の事由によるけがや病気のために労務不能となった場合でも、別の原因で労災保険から休業(補償)給付を受けている間は、傷病手当金は支給されません。ただし、休業(補償)給付の日額が傷病手当金の日額より低いときはその差額が支給されます。

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