男性も育児休業を取得しやすい職場環境づくり

2023年10月31日

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男性の育児休業

Q.法改正により、今後は男性従業員も育児休業を取得しやすい職場環境にしていかなければならないという話を聞きました。具体的に会社としてどのような対応が求められるのかについて教えてください。

A. 政府は、出産や育児などによる労働者の離職を防ぎ、また、希望に応じて男女ともに仕事を育児を両立できるようにするため、育児休業や介護休業などについて定められている「育児・介護休業法」などを今年の6月に改正しました。主な改正事項は次のとおりです。

「育児・介護休業法」の改正について

育児休業に関する次の改正事項は、すべて一斉に施行されるわけではなく、令和4年4月1日から段階的に施行されることになっています。

今回の改正の目的は、出産や育児などによる労働者の離職を防ぎ、希望に応じて男女ともに仕事と育児を両立できるようにすることですが、基本的には男性の育児休業取得率を向上させることにあります。

雇用環境の整備、個別の周知・意向確認の措置の義務化

育児休業の申し出やその取得を円滑にするために雇用環境を整備すること、また、労働者本人またはその配偶者の妊娠や出産の申し出をした者に対しては、個別に育児休業制度について周知することや、実際に取得するのかどうかの意向確認を行うことが事業主の義務になります。

②有期雇用労働者の育児・介護休業取得要件の緩和

有期雇用労働者が、育児休業・介護休業の取得できる要件のうち「事業主に引き続き雇用された期間が1年以上である者」という要件が撤廃されます。

③育児休業の分割取得

これまで、育児休業制度においては認められていなかった分割取得について、2回まで分割して取得することが可能になります。

④産後パパ育休(出生時育児休業)制度の創設

男性労働者が本来の育児休業とは別に、子の出生後8週間以内に4週間まで取得することができる「産後パパ育休(出生時育児休業)」制度が創設されます。

⑤育児休業取得状況の公表の義務化

常時雇用する労働者数が1,000人超の事業主には、育児休業の取得状況を公表することが義務付けられます。


さらに詳しく…

段階的に施行される育児休業の改正事項について

育児休業に関する改正事項は、令和4年4月1日から段階的に施行されることになっています。各改正事項の施行時期およびその詳細は次のとおりです。

令和4年4月1日から施行される内容

①雇用環境整備、個別の周知・意向確認の措置の義務化

「育児休業を取得しやすい雇用環境の整備」として、育児休業と産後パパ育休(下記参照)の申し出が円滑に行われるようにするため、事業主は以下のいずれかの措置を講じなければならなくなります。
※複数の措置を講じることが望ましいとされています。

(1)雇用環境整備について
  • 育児休業・産後パパ育休に関する研修の実施
  • 育児休業・産後パパ育休に関する相談体制の整備等(相談窓口の設置)
  • 自社の労働者の育児休業・産後パパ育休取得事例の収集・提供
  • 自社の労働者へ育児休業・産後パパ育休制度と育児休業取得促進に関する方針の周知
(2)個別の周知・意向確認について

「妊娠・出産(本人または配偶者)の申し出をした労働者に対する個別の周知・意向確認の措置」として、本人または配偶者の妊娠・出産を申し出た労働者に対して、事業主は育児休業制度などに関する下記の事項の周知と、休業の取得意向の確認を個別に行わなければならなくなります。

※取得を控えさせるような形での個別周知と意向確認は認められません。

周知事項・育児休業・産後パパ育休に関する制度
・育児休業・産後パパ育休の申し出先
・育児休業給付に関すること
・労働者が育児休業・産後パパ育休期間について負担すべき社会保険料の取り扱い
個別周知・意向確認の方法面談、書面交付、FAX、電子メールなどのいずれか
※面談はオンラインによるものでも可
※FAX、電子メールなどについては該当労働者が希望した場合のみ可

②有期雇用労働者の育児・介護休業取得要件の緩和

有期雇用の労働者については、育児休業・介護休業を取得できる要件が次のように緩和されます。

現行令和4年4月1日~
(1)引き続き雇用された期間が1年以上であること
(2)1歳6か月までの間に契約が満了することが明らかでないこと
左記(1)の要件を撤廃し、(2)のみとする。
※労使協定を締結した場合には、無期雇用労働者と同様に事業主に引き続き雇用された期間が1年未満である労働者を対象から除外することは可

令和4年10月1日から施行される内容

③育児休業の分割取と産後パパ育休(出生時育児休業)制度の創設

現行の育児休業では、原則として分割して取得することはできませんが、次のとおりそれが可能となり、さらに「産後パパ育休(出生時育児休業)」という制度が新たに創設されます。

育児休業産後パパ育休(新設)
※育児休業とは別に取得可
対象期間・
取得可能日数
原則として子が
1歳(最長2歳)になるまで
(これまでと変更なし)
子の出生後8週間以内に
4週間まで取得可
申出期限原則として1か月前まで
(これまでと変更なし)
原則として休業の2週間前まで
分割取得分割して2回取得可
(これまで分割取得は原則不可)
分割して2回取得可
休業中の就業原則として不可
(これまでと変更なし)
労使協定を締結している場合に限り、
労働者が合意した範囲内での就業は可
1歳以降の延長育児休業開始日については柔軟に対応する
(これまでは育児休業開始日は
1歳または1歳半の時点に限定)
1歳以降の再取得特別な事情がある場合に限り再取得可
(これまでは再取得不可)

令和5年4月1日から施行される内容

④育児休業取得状況の公表の義務化

従業員数が1,000人超の企業については、育児休業等の取得状況を年1回公表することが義務付けられます。
公表しなければならない内容は、現状では「男性の育児休業等の取得率」または「育児休業等と育児目的休暇の取得率」とされていますが、詳しくは省令で定めることとされています。

男性の育児休業取得率を向上させるために

今回の改正の目的は、基本的には男性の育児休業取得率を向上させることにあります。会社によっては、まだまだ男性従業員に育児休業を取得させることに否定的な考えを持っているところもあるでしょうし、取得させたくても業務上、難しいところもあると思います。そのような会社では、上記の改正事項に対応する前に、まずは男性従業員に育児休業を取得させることについて会社としての考え方を改めることや、業務分担の見直しなどが必要になるでしょう。

なお、男性の育児休業取得率は年々上昇しており、厚生労働省は、令和2年度の男性の育児休業取得率を12.65%(過去最高)と発表しています。厚生労働省は令和7年までには30%にすることを目標に掲げていますので、今後はさらなる改正が行われることも予想されます。企業としては遅かれ早かれ、必ず対応していかなかればならないことを十分理解しておく必要があります。

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