保育園の労務管理でお困りの園長先生へ

2023年9月1日

服務規律を見直して、知的財産と個人情報の保護を図り、保護者の信頼を得ましょう

保育園の服務規律でよく問題になるのは、次のような部分です。

  1. 園児や保護者の情報を含む個人情報や知的財産の守秘義務
  2. SNSの利用方法
  3. 髪型(髪色)やつめの長さなどの身だしなみ
  4. 職場ルールの不徹底によるトラブル

知的財産と個人情報

「保育園に知的財産なんてありません」と、おっしゃる方がおられます。でも、そうではありません。保育園にも知的財産はあります。それは、職員さんが、額に汗し創意工夫を重ねたものです。

例えば、保育日記の記載方法や給食メニューの工夫など、他園とは一味違う「ちょっとした工夫した何かの積み重ね」が、保育園における知的財産です。園児さんや保護者同僚などの個人情報はもちろん守らなければなりません。今の時代、守って当然です。ただ、「知的財産」の管理については、少し認識が甘いような気が致します。

当事務所では、上記の(1)~(4)について、園の経営方針に沿って、就業規則の中の服務規律として、文章による見える化を致します。また、それに対応した書式などをそろえさせていただきます。また、それだけでは、職員さんにとって、なじめないかもしれませんので、「職場のルールブック」をご要望に応じて作成させていただきます。職員研修などでお役立ていただければと存じます。

知的財産と個人情報の保護の徹底を図り、保護者の方の信頼を得ましょう。当事務所では、知的財産権の保護まで明記した「就業規則」と「職場のルールブック」ご準備できます。

持ち帰り残業をなくして、労務リスクを低減しましょう

2020年4月の民法債権法の改正により、残業代の未払い債権も5年に変更されました。それに伴い労働基準法の未払い請求も「当分の間3年」と変更されました。未払い残業を放置することは、非常に高いリスクを残すことになります。

そもそも、持ち帰り残業とは何でしょう。

持ち帰り残業とは「持ち帰りの指示」または「持ち帰り残業の黙認」、「持ち帰り残業の黙示の指示」により、自宅またはその他の場所で、退社した後の残業をいいます。

保育園の先生方には、大変にまじめでやさしい方が多いです。まじめで熱意もあるがゆえに、イベントのための準備作業を持ち帰り、自宅で作業するなどの行為が散見されます。職員さんの熱意はよくわかります。しかしながら、園の経営者としましては、やはり認めない方がよいでしょう。

先述のように、2020年4月の民法改正により、残業の未払い債権は5年に改正されました。いきなり5年に延長される訳ではないです。2020年4月の未払い残業分から、時効5年となります。退職後の請求も可能ですので、持ち帰り残業がない職場環境を整えてまいりましょう。

処遇改善加算Ⅱは注意しましょう

処遇改善加算Ⅱは、毎月の給与で支払うべき加算です。しかしながら、調整などでまとめて支払うことがありますと、社会保険料の算定のやり直しを年金事務所から指導されることがあります。

社会保険料の算定をさかのぼって再計算することになりますと、職員さんの社会保険料の月額保険料が変更になることもありますので、給料から保険料の過不足の調整などが必要になります。大変に面倒くさい作業になりますし、職員さんからの信用を損ないかねません。

処遇改善加算Ⅱの取り扱いは注意しましょう。

賃金表を見直しにより、新卒採用と、60歳以上の職場環境づくりにおいて、他園との差別化を図りましょう

保育士さんの人材不足や企業主導型保育園などの増加に伴い、新卒人材の人件費が非常に高くなっております。貴園におかれましても、人材不足を解消すべく、ICTなどを活用されて、労働の省力化、人員配置の工夫等に努力されていることと存じます。
総額人件費はなかなか変えることができませんので、賃金表の見直しが必要になることがあります。つまり、賃金表のカーブの変更が必要になります。

新規採用の金額が上がりますので、新規採用のスタート賃金を上げて、賃金カーブを変更するなどの措置を行い、処遇改善加算なども含めて、総額人件費の検討をおこないます。

ただし、60歳以上の職員さんの活躍も、保育士不足や経験年数による加算もあり、必要欠くべからざるものです。

2021年4月より高齢者雇用安定法の改正により、70歳までの雇用確保努力義務が企業に義務付けられました。もちろん、「努力義務」です。「義務」ではありません。ただ、定年をいくつにするか、定年後の処遇をどうしていくか?保育園の経営方針を加味して、よくよく検討していかなければならない重要事項です。

いったん制度を導入しますと、不利益変更は難しくなりますので、慎重に検討する必要があります。

定年後の処遇で検討すべき事項・例

  1. 定年はいくつ? 継続雇用はいくつ?
  2. 対象者は?
  3. 選択制を検討するのか?
  4. 定年後の勤務日数や勤務時間数などの働き方
  5. 賃金はどのようにするのか(現状維持か?下げるのか?)
  6. 役職定年制を設けるのか
  7. 退職金や賞与はどうするのか

そのうえで、定年や継続雇用を延長するという場合は、65歳超雇用推進助成金・65歳超継続雇用促進コースがあります。保育園の経営計画と助成金の制度趣旨が合致する場合は、是非、活用いただければと思います。

当事務所では、賃金表やキャリアパスの見直し、定年後の処遇制度構築をお手伝いしています。

参考/定年延長とシニア従業員のキャリア開発の考え方
   70歳までの就業機会の確保

職員・非常勤・〇〇職員、職員を複線コース別に管理して、労働力不足と同一労働・同一賃金を乗り切ろう

同一労働同一賃金の問題や、上記のような④総額人件費の問題、有資格者の不足などもあり、複線コース別に労務管理を行いましょう。複線コース別労務管理を行うに当たっては、2021年4月から中小企業も義務化になっている、同一労働同一賃金対策をを十分に意識します。

同一労働同一賃金対策手順

  1. 労働者の雇用形態を確認
  2. 待遇の状況を確認
  3. 待遇に違いがある場合、違いを設けている理由の確認
  4. 待遇に違いがあった場合、その違いが「不合理ではない」ことを説明できるように整理

当事務所では、各コースについての職務内容の明確化、定義づけ、同一労働同一賃金に適う賃金配分や労働時間の整備などをお手伝いさせていただきます。

参考/同一労働同一賃金の適用で、企業に求められる労務管理

保育園でもリモートワークを検討してみましょう

緊急事態宣言の中、登園する園児の数が減り、先生方の在宅ワークに取り組まれた保育園もあります。業務を切り分けて、在宅でできる業務を行いました。例えば、Youtubeの読み聞かせの動画撮影や、お遊戯などの動画撮影であったり、Zoomなどによるオンラインコミュニケーションなどです。

保育計画の策定や給食のメニュー作りなども、在宅で出来そうです。ワクチンの接種が進むまでは、在宅勤務を取り入れて、園内の人数を少しでも押さえた方が感染リスクはさがります。

リモートワークを行う場合の問題点としては、勤務時間の把握が難しいことや、コミュニケーションの問題が挙げられます。

  • 勤務時間の把握の問題点については、クラウド型の勤怠管理システムを導入することや、電話やメールで開始時間と終了時間の報告を入れることや、日報などにより、業務の報告を上げることなどにより解決ができます。
  • コミュニケーションの問題は、保育園や各職員さんをZoomなどのシステムで結ぶことにより、かなり緩和されるとおもいます。

当事務所では、リモートワークの規定などを設けることも含めて、保育園のテレワークの環境整備をお手伝いすることができます。

参考:テレワークに必要な就業規則と社内体制の整備