従業員に退職勧奨を行うときの注意点

2021年6月30日

従業員 退職勧奨 労務相談 社労士 鹿児島 上岡

退職勧奨とは、著しく能力が低い従業員や素行が悪い従業員などに退職を勧めることを言いますが、退職勧奨を受けた従業員はこれに応じる義務自体はなく、実際に退職するかどうかはその従業員が判断することになります。

辞めさせたい従業員がいれば、いきなり解雇すればよいのでは?と思われるかもしれませんが、解雇について労働契約法第16条では、「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして無効とする。」とされていることもあり、違法行為などがあったことにより懲戒解雇とする場合を除いては、解雇は最終手段として慎重に行わなければなりません。

例えば、就業規則に解雇事由として、「勤務状況が著しく不良で改善の見込みがなく、労働者としての職責を果たし得ないとき」と規定しているのであれば、該当する従業員を直ちに解雇できるようにも思えますが、仮にその者から訴えられた場合、裁判所では会社がその従業員に対して解雇回避のために十分な指導を行ったのかなども考慮されるため、場合によってはその解雇自体が無効と判断されることもあります。

話を退職勧奨に戻しますが、会社が問題のある従業員に退職勧奨を行うこと自体は適法です。ただし、それが行き過ぎると、退職強要となり、民法上の錯誤(第95条)、詐欺・強迫(第96条)などに該当し、違法と判断される可能性もありますので、退職勧奨を行う際には次の点に注意しなければなりません。

①面談の時間や回数
退職勧奨を行うための面談時間が長すぎたり、その面談の回数が多すぎたりすると、退職強要となり、違法と判断される可能性があります。
ちなみに、1時間を超える退職勧奨の面談を5回行ったケースが、違法と判断された裁判例もあります(エム・シー・アンド・ピー(退職勧奨)事件・京都地裁 平成26年2月27日判決)

②面談に出席する会社側の人数
退職勧奨を行うための面談に会社側として大人数が出席したりすると、心理的な圧迫を加えたとして違法と判断される可能性があります。
このため、面談に出席する会社側の人数としては、事情を把握している該当従業員の所属部課の責任者などの2~3名程度に絞るべきです。

③面談での言動
退職勧奨を行うための面談において、高圧的な言動で退職を迫ることは、もはや退職勧奨ではなく退職強要であるため、違法と判断される可能性があります。
実際に退職するかどうかの決定権はあくまで該当従業員にあることを認識し、退職勧奨を行うための言動には十分に注意しなければなりません。

④即日での回答を求めない
退職するかどうかの判断の猶予を与えない退職合意は無効と判断される可能性があります。
会社側としては、可能な限り早めに退職して欲しいという思いから、すぐに退職するという回答を求めがちですが、1回目の面談ですぐに退職を強要するようなことはあってはなりません。

⑤退職を拒否された場合はそれ以上勧めない
該当従業員から退職を明確に拒否された場合、それ以上、退職を勧めることは上記で説明したとおり退職強要にあたりますのでいったんは面談を中断すべきです。
その後の方針としては、新たな提案(退職金を増額するなど)とともに退職勧奨を続けるか、該当従業員が就業規則に違反し、再三注意、指導しているにもかかわらず、改善が全くみられないという証拠を固めていよいよ解雇を検討することになります。

いかがでしたでしょうか?会社としては従業員への退職勧奨や解雇の通告はできればやりたくない手続きですが、長年、会社を経営していると、残念ながらこれらの通告をしなければならない従業員は必ず出てきますし、このコロナ禍のように、経営上やむを得ず通告しなければならない場合もあります。

その際には、大きなトラブルを起こした従業員を除けば、いきなり解雇を通告するのではなく、まずは退職勧奨を行って穏便に退職してもらうことを検討してみてください。

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