賃金のデジタル払いについて

2023年10月31日

スマートフォンで示す、賃金のデジタル払いに関するイメージ

ついに賃金の、デジタル通貨払いがはじまります。煩雑なデジタル通貨払いですが、メリットデメリット踏まえて、検討してみてください。

Q. この4月から、従業員に支払う給与や賞与を従業員が利用している「〇〇Pay」などの口座に入金することも可能になると聞きました。この支払い方法について詳しく教えてください。

A. 政府はキャッシュレス決済が普及していることなどを受けて、労働者に支払う賃金を「PayPay」や「LINE Pay」などの、いわゆる「資金移動業者」の口座に入金(厚生労働省ではこの支払い方法を「賃金のデジタル払い」としています。)できるよう労働基準法施行規則を改正し、この4月1日から施行されることになっています。

ただし、入金が可能になる資金移動業者は、厚生労働省においてこれから決定することになっていますので、企業においてこの4月からすぐに賃金のデジタル払いを導入できるわけではありません。導入が可能になるのは対象となる資金移動業者が決まってからです。

以下、賃金のデジタル払いの概要や導入するための手続きなどについて説明しています。


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さらに詳しく…

賃金のデジタル払いとは

賃金のデジタル払いの概要は次のとおりです。

制度の概要

労働者が指定する銀行口座などに振り込むためには…
(労使協定を締結して個別に労働者の同意を得る必要がある)

労働者に賃金をどのように支払うのかについて、労働基準法では、現金で直接労働者に手渡すことが原則とされていますが、労働基準法施行規則では、労使協定を締結して個別に労働者の同意を得ることができれば、例外的に労働者が指定する銀行口座などにも振り込むことができるとされています。

例外的な支払い方法の選択肢がふえる…
(銀行口座などへの振り込みに加えて、デジタル払いも)

今回の労働基準法施行規則の改正により、4月1日以降は、例外的な支払い方法である銀行口座などへの振り込みに加えて、デジタル払いも選択できるようになります。

この賃金のデジタル払いを導入することで、企業側としては給与の支払い業務が複雑にはなりますが、銀行口座などへの振り込み手数料よりも入金手数料が安くなる可能性(※)がありますし、日頃からキャッシュレス決済を利用している従業員もお金を銀行口座から資金移動業者の口座に移動させる手間がなくなるというメリットがあります。

※現時点では、資金移動業者の口座への入金手数料は銀行口座などへの振り込み手数料よりもかなり安く設定されていますが、下記で説明しているとおり、対象となる資金移動業者はまだ決まっていないため、必ず安くなるとは断言できません。(対象となる資金移動業者が手数料を改定する可能性もあります。)

4月1日から導入できるわけではない

冒頭でも説明していますが、まだどの資金移動業者の口座に入金できるのかは決まっていません。対象となる資金移動業者は4月1日以降、厚生労働省が資金移動業者からの申請を受け付け、審査のうえ決定することになっています。 厚生労働省はこの資金移動業者の決定までには数か月かかるとしており、いつ決定するのか現時点ではわかりませんが、企業が実際にデジタル払いを導入できるのはこの資金移動業者の決定後になります。

デジタル払いを導入するための手続き

企業がデジタル払いを導入するために必要な手続きは次のとおりで、基本的には銀行口座などへの振り込みを採用する場合と同様です。

就業規則を改正する

就業規則あるいは賃金規程などにデジタル払いも選択できることについて、追記する必要があります。

労使協定を締結する

デジタル払いの対象となる従業員の範囲や対象となる資金移動業者の範囲などを記載した労使協定を締結する必要があります。

従業員の同意を得る、口座情報を収集する

全従業員にデジタル払いを導入することを説明し、デジタル払いを希望する従業員がいれば、その者の同意を得るとともに、入金を希望する資金移動業者名やその口座情報(アカウント・ID)などを収集する必要があります。


専門家からのひとこと

企業において賃金のデジタル払いを導入できるのは厚生労働省が対象となる資金移動業者を決定した後になります。この決定がいつになるのかは不明です。

厚生労働省は決定までには数か月かかるとしているため、少なくとも3か月以上はかかるのではないかと思います。

賃金のデジタル払いの導入を検討している企業様におきましては、この待ちの期間を利用して、デジタル払いを希望する従業員がどれくらいいるのかアンケート調査を実施してみてはいかがでしょうか。

また、上記で説明した就業規則などの改正の準備を進めておけば良いでしょう。

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